第79話は、サリアさん宅にて。
宜しくお願いします。
その日は、サリアさんのお宅にお邪魔することになった。
私たちが泊まるサリアさんのお宅というかお屋敷には、お手伝いさんというか婚約をされている女性(侍女)が3人ほどいる。 何でもこのお屋敷で礼儀作法を身に着けるとの事だ。
で、サリアさん宅で5年ほど礼儀作法をしっかりと身に付けたのちに嫁ぎ先に行くとの風習らしい。 エルフ族では、ハイエルフの下で家事見習いをするのが風習らしい。 ちなみにハイエルフであるサリアさんもだが、親元で三百年ほど過ごしているので、そういった事はすでに習得済とのことと聞いた。
とはいえ、私からすれば5年の歳月というのは長いと思うが、これも種族の違いなのか例え十年、二十年かかっても本当に身に付くまで、この屋敷にいるとのことだ。 まあ時間をあまり気にしない種族でもあるからという訳でもないが、サリアさんが言った
「せっかくですので、ここでゆっくりと腰を落ち着けてはいかがですか?」
という発言に関しては多分、何十年から何百年単位のことなのだろう。
とはいえ、瘴気についてある程度目途がつかないと動こうにも動けないので、しばらく厄介になりますとお願いをし、せっかくなので私たちの普段住んでいる夢みるテントにも案内することにした。
『素晴らしいですわ!』
家の中を軽く案内をしたら、サリアさんと侍女さんがテントに入るなり口を揃えて褒め称える。
「このテントは、私の故郷のものを基調としているので、見慣れないものも多いと思いますが……」
「そうなんですか。 とても興味深いですわ。 もし、宜しければ一週間ごとにお互いの家を行き来することって可能でしょうか?」
目をキラキラさせて詰め寄ってくるサリアさん。
サリアさん宅まで行った時に感じられた大人の余裕というのは、好奇心の前では跡形もなく崩れ去ったみたいである。
「ええ……、構いませんよ」
『ありがとうございます!』
ちょっと気押されるような感じで返事をすると、サリアさんだけでなく侍女さんからも嬉しそうにお礼を言われた。 エルフ族というのは保守的と想像したのだが、違うようだと少し認識を改めることにした。
「せっかくですので、嫁ぎ先には少し結婚まで延長をお願い致しますわ」
「私も!」
「勿論、わたしも」
「でしたら、私がその旨を連絡しておきますわ」
「それって大丈夫なんですか?」
「ええ。 ほんの五年ほど伸ばすだけですから、全然問題ありませんわ」
『サリアさま、ありがとうございます!』
五年って結構な歳月だと思うのだが、どうもサリアさん達の感覚では私たち換算でいうと半年ほどみたいに簡単に決めてしまう。 まあクリスの除去作業も数年単位であると共に、恵やお紺もエルフ族に近い寿命を持つので年齢を重ねるには丁度いいので上手く乗ることにする。 幸い、こちらに対して悪感情どころか好感情で受け入れて貰える土台もあることだし、あとでサリアさんにお願いをしてみよう。
■ ■ ■ ■ ■
サリアさん宅に戻り、心尽くしの食事を頂くことになった。
何でも私たちの為に、本日猟師さんが森でウサギなどを狩ってくれたとのことだ。
で、ウサギ肉の料理やハーブを使った料理など、何品も用意されており、私たちの普段食べている料理と違ってとても新鮮な気持ちで味わえた。
その後、各個人個人に部屋を案内されることになった。
本来なら全員一緒、もしくは恵とお紺は同部屋でも構わないと言いたいところだけど、今回に関しては早くても数年単位ということなので、ありがたく個人部屋を受けることにした。
案内をされた部屋には、大きなクローゼットと大きなベッド(キングサイズ並)に、貴重な木で作られたと思わせるような机とイス。 そして立派な化粧台が置かれていた。 恵やお紺も化粧台に目を奪われている。 何といっても夢みるテントには洗面台しかなかったからである。 それに化粧台には色々な化粧道具などもあり女の子だけあって興味津々なのだろう。 先ほどのサリアさんや侍女さんのように熱心に使い方などを聞いている。
そしてある程度、落ち着いたところでお風呂を頂き、就寝することになった。
お風呂はヒノキ風呂に似た感じがして、とても気持ちよく入れた。 今度夢みるテントで風呂を時々変えるのもいいかもしれないと感じた。
ちなみにクリスは、テントを案内している時にサジさんに連れられて戻って来て、現在はエルフの男衆の急遽作られた小屋でお休み中である。
普段、夢みるテント内の玄関の一角に使い古しの玄関マットを敷いていたから、サリアさん宅の玄関か家畜小屋の一角にでもと考えていたのだが、神獣に近い動物と湖の妖精から認定を受けたので、雑な扱いになど出来る訳もなく大急ぎで作ったとのことである。 尚、こちらはあくまでも仮の住処であって、明日から本格的にクリスの住処を作る計画らしい。
まあ基本、クリスなど小屋など寝るだけなので、クッションが一つあるだけで十分な感じもするが、何かとても楽しそうに設計についての相談をしているので黙認することにした。
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