第75話は、エルフの森に行くことにした話。
少し前にさかのぼります。
私は、改めて「瘴気」について考えることにした。
この世界での瘴気というものは、生きるもの全ての負の感情から作られるものらしいのだ。
ただ少しくらいの瘴気の場合は、地脈などの力で浄化されるので影響がないらしい。
現に千年ほど前までは、瘴気は自然に浄化されており、何の問題もなかったとのことだ。
ならこの世界は、何時から瘴気が浄化できずに歯車が狂いだしたのだろうか?
管理者のお爺さんに聞くことも考えたが、そもそも管理者のお爺さんがわからないから私に頼ってきたのを思うと多分聞いても答えはわからないだろう。
それなら、この世界で一番長く住んでいる人に聞けばよいと思った。
エルフ族。
この世界に数百年と長き寿命を持つとされる種族である。
大自然に寄り添い、深い森に住むといわれている種族だ。
更にエルフの中でも特に優れた種とも言われるハイエルフとなれば千年の単位で生きると言われている。
この人に近い種族だから、瘴気が蔓延した原因を知っているかもしれない。
他にも長寿命な種族として、プラチナドラゴンなど神獣もいるがここは除外する。
視点が管理者のお爺さんと同じ可能性が高く、また会えるかどうかも微妙だからである。
管理者のお爺さんに頼めば、会えるように手配されるかもしれないが、何となくだが、まだ恵と会わせない方がいい気がするのでやめておく。
それにエルフ族なら、私と別れたあとも恵やお紺のよき相談相手になってくれるかもしれない。
せっかくだから、今のうちに一度会ってみるのかもいいかもしれない。
結論が出たので、早速心の中で管理者のお爺さんに問いかける。
■ ■ ■ ■ ■
(管理者のお爺さん、今、大丈夫でしょうか?)
「太郎殿か。 久しいのう。 先ほどまで用事があったのじゃが今は、大丈夫じゃ」
(少しお聞きしたいことがあるんですが、エルフ族の住まわれている場所はご存知ですか?)
「うむ。 そうか……、恵やお紺のことか。 すまんの……」
(それもあるんですが、ドワーフ村と先日居た人族の村で確認した瘴気の件も気になったので)
「瘴気か……。 ワシも少し気にしたのじゃが、違う件が入りそのままにしてしもうた。 そうか、瘴気が原因か……」
(いえ、まだ瘴気が原因とはわかっていないのですが、気になったので調べてみようかと)
「それでエルフ族か。 うむ、いいかもしれん。 エルフの住んでいる場所は、結構複雑での。 ふむ……。 そうじゃ、空飛ぶベンチの行先指定の一つにエルフ族の森にしようか」
(では、空飛ぶベンチに座れば?)
「着くぞ。 あとエルフ族の主だった者に通達を出すから、太郎殿の名を出せば協力してくれよう」
(ありがとうございます!)
「こっちこそ、いつもすまんの。 宜しく頼む」
■ ■ ■ ■ ■
今後の方針が決まったところで、恵とお紺に次の行先を話すことにした。
「本当なら、話し合いで決めるところだが、瘴気に関して早く対処した方がいいと思い、こちらで決めさせてもらったよ」
「瘴気ですか……。 私も少し気になっていたんですが、どこから手をつけていいかわからなかったんですよ。 ただ聖魔法が有効らしいので、少し覚えました」
「エルフの森ですか。 ラミア母さんたちを思い出しますね」
恵とお紺も特に異論はないようで、すぐに受け入れられた。
早速、空飛ぶベンチを取り出すと怪訝な顔をする恵たちに管理者のお爺さんに付けてもらった新たな機能を説明をし、出発の準備にとりかかる。
ゴロウさんたち、村でお世話になった人たちに別れを告げ、村を出る。
この村のほとんどの人たちがピンク色の魂をしているから浄化は成功したと考えている。
少なくとも黒っぽい色をした人は見かけない。
で、村の人たちには、すでにこの世界の事を話しているから寂しそうな顔をするが止められることはない。 激励を受け、今後も困っている人が居たら受け皿になると話してくれた。
そんな訳で十五年居た村とも別れ、新たな地、エルフの森へと向かうのであった。
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