第71話は、隣の村との和解。
よろしくお願いします。
この村で料理教室を開催して、およそ五年の歳月が流れた。
あれからゴロウさんの従業員の家族の協力もあり、あれよこれよという間に村全体で、健康に取り組むという体制が整えられた。 料理教室が開催された当初は、夢みるテント内で行われていた料理教室も、一年後には応募者が増えたこともあり、村の中心部にある集会場を改築して、そこで行われるようになった。 料理教室の参加累計人数も村の人口の半分くらいになった。 ちなみにこの料理教室は、およそ半年で一応の終わりだが、この雰囲気が好きで引き続き参加する人が結構おり、盛況な場になっている。 ゴロウさんの奥さんであるミスズさんや娘さんのアオバちゃんも、そのうちの一人だ。
出会った当初、まだ十歳くらいだったアオバちゃんも今では高校生くらいになり、今ではすっかりお姉さんになっている。
昔は少しお転婆だったけど、今では料理教室に来ている子ども達に丁寧に料理を教えているのがポイント高いのか、結構人気者でお見合いの話が結構多いのだそうだ。 そこまで美人じゃないけど、庶民的というか少し頑張れば手に届くような可愛らしさと、料理が上手で家庭的な雰囲気を持つのだから無理もないことである。
反対にモテそうでモテないのがうちの子達である。 目を見張るような美人さんで、料理や家庭的な子でもある。 ただし魔法少女でもあるので、男女の憧れであっても恋愛対象にはならないみたいなのだ。 まあ本人たちも全く気にしていないから私もふれないのだが。
そして、村に来る行商人さんも時折、この料理教室に参加している。
この行商人さんが隣村にも行っていることから、少しずつだが、料理のことで交流が出来つつある。 とりあえずは、隣村の普段食べている物などの情報が行き来し、隣村の興味のある調味料を交換したり、食材を交換したりするだけのことだけど。
そう、ほんの少しずつだけど……。
まあ実際には、ほとんど行商人さんが行ったり来たりしてのことだけど、行商人さんがいない時には村人が行くこともある。 少しずつでも諍い以外にも興味が出来るのは十分といえよう。
そのおかげで、大人たちの隣村に対する悪い感情は流石に、まだ改善されていないけど、その子どもたちの忌避感は、ほとんどないと言っても過言ではない。
次代の世代に忌避感を与えなければ、これからの十年、二十年後は改善出き、半世紀後には普通に交流が出来るに違いないと私の中では、少し手ごたえを感じている。
何年……それこそ百年以上、互いの村の関係が悪かったのだから、たとえ十年後に少しでも改善が出来れば御の字と考えている。 それに急激な変化は関係にシコリを残すかもしれないが、ゆっくりと、それこそ十年、二十年と徐々に恨みを薄れさせる、というか気持ちの持ちようを変えていければ、そのシコリは減ると私は考えている。
そもそも恨みというのは、時間の経過とともに、少しずつ風化していくものと聞いている。 まれに、歴史の一ページに名を残すような人物の中には恨みを忘れなかった人物もいたが、ここに居る村人は一般人だ。 何の問題もなく穏やかな生活をしていけば、時間の経過とともに、恨みはゆっくりと風化していくに違いない。
そうすれば、この地に渦巻いていた瘴気も徐々に薄くなり、少しずつだけど魂が浄化されていくという訳なのだ。
私が、ここに五年居て気付いたことは、瘴気によって少しずつ人、いやこの村の動植物の魂が穢されていくのを確認している。
その瘴気も現在、クリスの食欲によって少しずつだが、減少の傾向にある。
ただ今までに溜まった瘴気が強いので、ドワーフ族の村のように簡単に上手くはいかないが、それでも徐々に減っているのだけは確かだ。
それに何か問題があっても、自分たちがいる間は、二人の魔法少女に物理的な争いにならず平和的? に解決すればいいと思っている。
人間という生き物は、少しの力の違いには嫉妬やら反感も湧くが、格といか全てを超越する力には、諦めという観念が働き、そこまで反感を湧かないものだ。
また、隣村との諍いの大きな原因でもある雨が降らないと水をめぐって諍いが起きるいう事も、管理者のお爺さんにお願いをしてたら、どうも違う世界の人にお願いをしたらしく、水の供給という面が改善され、最低でも半月に一度は、農作物が枯れない程度の雨が降るようになった。
ただし長雨の場合はどうしようもない。 そこまで面倒を見てもらうことも出来ないし、そもそも水が足りないことが多く、長雨など百年のうち一年あるかどうかとの話というか記録だった。
とりあえず、水問題で隣の村との諍いは大きく減ったのは有難かった。
これによって国も含む、この辺りの緊張が一気に減ることになり、諍いが更に減る事になった。
食料の確保が以前より安定した結果により、この世界の文化は少しずつ花開き始めた。
この世界には絶対的な存在である、プラチナドラゴン(恵の片割れ)がいるので、他種族を征服するといった考えがない。
そのせいか基本的にこの世界の住民は興味があるのは自分たちの種族のみで、他種族が何をしていようと全く興味がないみたいなのだ。 他の種族が発展して繁栄を遂げようが、反対に滅びようがどうでもいいというのが、この世界だ。
現にドワーフ村のことを一例にとってもらえばわかる。
まあ一部の者は他種族にちょっかいを出したりするが、程度を少し超えると自分たちの国で手配され、牢屋に送られてしまうシステムになっている。
この世界は人口が少ないので、処刑にこそはされないが、残りの人生は牢屋で貧しい食事をしながら、人の嫌がるような重労働若しく内職(年齢を重ねても許されない為)を死ぬまでされるらしい。
ちなみにこの牢屋というのは、鉱山若しくは決壊を起こしやすい川辺の付近にあり、当然自然災害などでも死んでしまうということがあるとのとのことだ。
或る意味、いくら反省をしても許されずに、一生後悔をして贖罪を続けるということは、死刑より大変なことなのかもしれない。
ちなみに以前、ラミアを追っていたあの冒険者の方々も御多聞に漏れず、すでに国に捕まり、鉱山の牢屋の中にいて、山で日々、重労働をしているとのことだ。 この情報は、管理者のお爺さんから聞いたので間違いない。
■ ■ ■ ■ ■
それから、更に20年の歳月が流れた。
もう太郎たちは、すでにこの村にいない。
10年前に、この村から出て行ったからだ。
太郎たちの思っていたよりも、ずっと早く隣の村と和解出来たのだ。
その立役者は、なんとアオバちゃん。
隣の村の若者と恋に落ち、太郎たちを含め、村の若者が応援して見事に恋を成就させたのだ。
ただし、お相手は村の実力者の息子でもなく、ごく一般的な家庭の次男坊。
ちょっと頼りなく、母性本能をくすぐられる、ちょっと気弱で優しい青年だった。
あちらの両親は反対しなかったけど、ゴロウさんが大反対。
「あんな頼りない奴に娘をあげられるか!」って、当初ミスズさんも反対をしていたんだけど、娘の涙にほだされて、賛成にまわり、ゴロウさんは恵とお紺に「でしたら、頼りになるゴロウさんを見せてください」と……。
無事、ゴロウさんの承諾を得て、結婚することが出来た。
で、まだ少しわだかりもあったゴロウさんだったが、アオバちゃんの産んだ男の子を見て、そのわだかりも消え、現在ではお婿さんをこの村によんで、一緒に晩酌をするのを楽しみにしている。
もちろん健康の為、量と飲む日は決められているが。
その仲睦まじい家族の様子を見て、お互いに同じ人間だし、いがみ合うものでもないと、柔軟な考えを持つ若者たちが徐々に歩み寄り、太郎たちのいなくなった10年後には、ほとんどいがみ合いはなくなった。
ただ高齢の方には、まだ許せないといった人もいたが、それもほんのわずか。
瘴気もクリスの旺盛な食欲のおかげで、こちらだけでなく隣の村の瘴気の混じった草を食べたおかげで、瘴気をほとんど感じることがない。 あとは自然に浄化されていくだけである。
それを見て、太郎たちは安心して村を出て行くことが出来たのだ。
別れは笑顔で。
またの再会を約束して旅に出たのだった。
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