第67話は、村を散策してのこと。
宜しくおねがいします。
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翌日、アオバちゃんが回復したのを確認して村へ向かって歩いて行くことになった。
そのアオバちゃんだったが、道中はしゃぎ過ぎたのか少し疲れた感じだったので、クリスに乗りながらの道程だった。
ちなみにホワイトバンビのクリスには、なかなか立派な角があり、その角は毛並みと違ってツルツルして触り心地がいい。 これをハンドル代わりというか手すり代わりに持っての移動だ。 半日くらいしたらすっかりクリスの背中に慣れて、今ではお気に入りになっているようだ。 クリス自体も子どもが好きらしく嫌がる素振りは見せていないから、ずっとこの様な調子だ。
晴れ渡る空に見守られてのノンビリとした旅だ。
道中に小さな村があったが、夢みるテントがあるので気にしないで進むことが出来る。
日中の暑い時間帯は、テントの中で少し休んで回復をして陽が落ちる所まで進む。
ゴロウさん達は、 「天気やトイレの心配もないので、とても楽ですね」 とこれまでと違った旅を楽しんでいるようである。
ただその楽しい旅の終わりも当然来る。
ゴロウさん達と旅をして五日目、やっと目的の村、ゴロウさん達の住んでいる村に着いたのだった。
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ゴロウさん一家の住む村の名前は【モリン】といって、この辺りでは大きめの村だ。
村の規模というか面積は、王都よりも大きいが人口が少ないので村という位置付けらしい。
村の近くに川があって、そこから水を引いて農作物を作っており、この国の穀物の二割近くはここで作られているという有名な農業地帯らしい。
ただこの豊かな農村はここだけでなく、モリン村から5kmほど離れたところにやっぱり隣の国の農業地帯があって、その村と水の権利を争ったりしているらしいのだ。
雨季はいいが、日照りになった時などには国の兵隊も加わり、一触即発の状態になるとのことだ。
現に三十年前の旱魃があった時には、国同士がぶつかり何人か死人が出ているとの話だ。
とりあえず先日も雨が降ったばかりだから、今のところ問題はなさそうだが、問題が起きる前に解決をするにこした事はない。
まずはこのモリンの村を見てみようということになったのだが、私達だけでは村に不慣れなので従業員を付けようとゴロウさんが言ったところ、それなら 「私が案内したいです!」 と、案内役をアオバちゃんをかって出てくれた。
何でも、誰もいない家に居ても退屈だから、私たちと一緒に行動した方が楽しいとの理由からだ。
この村に到着したのがまだ昼前だったので、とりあえず一度グルリと村を廻ってから、昼くらいに昼食も兼ねてゴロウさん宅におじゃますることになった。
その案内役のアオバちゃん、クリスに乗って一緒にグルっと村を回っている。
クリスに乗ってご機嫌で、私たちにこの村の名物やお祭りなどの行事、それと遠くに見える村長さんの家などの紹介などを手振りしながら紹介する。
そんなアオバちゃんの説明を受けながら、この田舎道を歩く。
まだ初夏の為か、稲の穂が青々しい。
この辺りの穀物は米が主食らしいが、どうもこの米を粉にして米粉にして蒸して団子にしたりや練って麺にして食べているらしい。
だからご飯を炊いたおじやという料理方法に驚いたらしい。
そういえば江戸時代のお蕎麦は、今みたくツルツルした食感でなく、蒸した料理だったのでボソボソとしてお世辞にも美味しくなかったとの事だったので別に不思議ではない。
ただ調理法の一つとして、ご飯という調理方法を残したいという気持ちは日本人としてあるが。
この青々とした水田の他にも畑もあり、みずみずしい色とりどりの野菜が実っており私の目を楽しませる。
少し山奥の田舎の土の匂いがした。
ひどく懐かしく心に響くような風景がそこにあった。
少し川沿いに歩くと水車小屋があり、水を田畑に行渡らせている光景に目を細める。
あぁ……私の過ごした昭和だ。
私自体は、街に住んでいたが祖父母の居た田舎の風景を思い出す。
ただそれだけに管理者のお爺さんから聞いた、この村の置かれている現状に心にささる。
この風景を見ただけでは、わからない村と村との水を巡っての争い。
それが、瘴気の原因になってしまっていること。
そして、私が道で視た村の人たちの魂に誰一人としてピンク色の魂を持っていなかったという現実。
私の魂を視るというのは、距離が少し離れていてもわかるのだが、誰一人としてこの世界に満足をしていないとの寂しい結果を目の当たりにした。
……そう、ゴロウさんやミスズさん、アオバちゃんを含めてだ。
ただ、ピンク色の魂はいなかったが黒色の魂も少なかった。
せめて隣にいるアオバちゃんや未来のある子どもたちをまずは、この世界に生まれてきて良かったと思うような楽しい思い出づくりを。
まずは、そこから始めようと思った。
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