第66話は、娯楽のはなし。
宜しくお願いします。
ゴロウさん一家が夢みるテントで泊まった翌朝、ゴロウさん一家が私たちの部屋へやってきた。
どうやら泊まったお礼と女の子の体調が良くなったので、一度顔を見せにを連れてやって来たみたいだ。
「昨日は、ありがとうございます。 あのお薬を飲んで一晩休んだらすっかり体調も良くなりました」
と、女の子が商家の娘さんらしく、丁寧にお礼の言葉を言った。
「顔色も良くなったし、もう大丈夫そうだね。 ただ今日はあんまり身体を動かさずにした方がいいよ」
と、言うと元気よく返事をして、まだお互いのことを自己紹介をしていなかったので、ここでする事になった。 昨日女の子の介護をしていたのは奥さんのミスズさんで、先ほど丁寧にお礼を言えた女の子はアオバちゃんとのことだ。
アオバちゃんは、今回初めてお爺ちゃんの所まで行ったのだが、少し遠かったのと暑さのせいで、体調を崩したみたいとのことだった。
もともと子どもは、自分の体温調整が難しいのでよくある事なのだ。
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少し体調が良くなっても、急に胃腸に負担のかかる食事を出すこともはばかられるので、朝食はおじやを出すことにした。
温めたお湯にご飯を投入して、かき混ぜた卵とほうれん草を入れ、麺つゆと生姜で味付けをするいたってシンプルな朝食だ。 味付けは少し薄めにしてある。
恵やお紺は、時折食べているので普通だけど、ゴロウさん一家はこの料理が初めてらしく、しきりに頷きながらレンゲを口に運んでいた。
【ゴロウ】「いやぁ、美味しかったです」
【ミスズ】「そうですね。 とても優しい味がしました」
【アオバ】「とってもおいしかったです!」
その言葉の通り、二合ほど入れて作ったおじやが全部完食されていた。
アオバちゃんも二杯おかわりしたとのことで、食欲も戻ったみたいで一安心だ。
体力が戻るには睡眠と食事が必要だからだ。
で、元気になったら子どもは退屈だと辛かろうという事で、みんなで遊べるトランプでもしようかと思ったが、ゴロウさん曰く、トランプだけでなくカードゲーム自体を知らないとのことだ。
ならせっかくなので、トランプを自分たちで作ってそれで遊んでみようとなった。
厚めの紙に1から13を書き、スペード・ハート・ダイヤ・クローバーの代わりに太陽・星・月・雲のマークにして、色鉛筆を用意して絵を描く。
この色鉛筆も初めてらしく、まずキレイな色を見て少し感動している。
ただ筆を使うのは、商家の娘さんらしく慣れているみたいですぐに慣れて、奥さんや恵やお紺と楽しそうに話しながら絵を描いている。
出来上がったトランプに、少し大きさにバラツキがあるのはご愛嬌である。
とりあえず簡単な七並べを教えて、みんなで遊ぶことにした。
しばらくして慣れると、七並べは頭を使うゲームなので、ゴロウさんが真剣になり大人げなく勝ったので奥さんに叱られるといった一幕もあったが、概ね楽しめた。
で、他に神経衰弱をやったところ、頭が柔軟なアオバちゃんの勝率が高く、楽しめたようだ。
ちなみに定番のババヌキはやっていない。
ジョーカーの件を忘れてしまったとの簡単な理由だ。
トランプをやっていた時に話を聞いていたのだが、この世界には娯楽が少ないようだ。
多分、この世界が生きるのに厳しいみたいなので、人々の心にゆとりがないので、そこまで思いつかないのかもしれない。
自分達で作ったトランプで楽しそうに遊んでいるアオバちゃんを見て、みんなで楽しめる娯楽をこの世界に広められないかを少し考えてみる。
例えば、トランプで親や兄弟と遊べば立派なコミュニケーションツールにもなる。
そして大人になって、子どもの頃を思い返せば、家族でトランプ楽しく遊んだという楽しい思い出になるかもしれない。
そこで私は、ゴロウさんに頼んで、少し儲かる程度の値段で販売をして貰えないかとお願いしてみる。
「そうですね。 このトランプというのは面白いですし、作るのに経費もかからないのでうちの店に置いて売ってみましょう」
ただ販売するトランプは、ゴロウさんの所で取り扱っている少し頑丈の紙を使って、版画の要領で作るから少し時間がかかるとの事だ。 確かに一枚一枚描いていると大変だ。
ちなみにこのトランプを使った遊びは、七並べと神経衰弱しか教えていない。
地球で出来た遊びを広めるのは、とても簡単なことだが、過剰に教えると新たな文化の妨げになるかもしれない。 また賭け事が流行しても大変だ。 賭け事が始まるのは仕方のないことだが、イキナリだと法などが対応出来ない。 少しずつだと対応することも出来る筈だ。
そんな訳で、このトランプも独自の文化で発展していけばいいなと思いながら見守ることにした。
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