第63話は、クリスの活躍。
よろしくお願いします。
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【クリス編】
まず始めにクリスは、太郎のペットでホワイトバンビのオスである。
このクリス、悪食であり草やキノコなどの植物に限っては何でも食べる。
薬草、毒草、麻痺草などお構いなしに食べることが出来る胃の持ち主である。
そしてこの物語において、半分忘れ去られているキャラクターなので、今回はピックアップし、ドワーフの村での過ごした日々の生活を追ってみる。
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クリスは、太郎のペットである。
そのクリスの見た目は、白い毛で触り心地がとても良さそうに思えるが、実際に触ると幻滅するようなゴワゴワとした硬い毛並みの持ち主である。
ちなみにホワイトバンビのお肉は美味しくないので、天敵がいない為に繁殖能力が落ち珍しい魔獣となっている。
クリスの村での扱いというと、村の大人も子ども嫌いではないけど、毛並みが残念なのであまり撫でたりされず、放置されているような状態である。
ただ普段から見慣れているので、よく声をかけられたり、野菜の残りカスを貰って食べている光景はちょこちょこ見られた。
そんな扱いのクリスだが、実はこの村で太郎と同じくらいに大活躍をしていたのだ。
このホワイトバンビという魔物は、先ほど書いてあるように悪食である。
そしてこの村は、瘴気に侵され、またその瘴気を含んだ草(雑草)が生えていた。
その瘴気に侵された草をクリスは、好んで食べていたのだ。
この瘴気を含んだ草を食べると、その土地の瘴気は当然弱まることになる。
例えば10ある瘴気の土地に生えている草をクリスが食べると、その土地から瘴気を吸い上げた草なので瘴気の濃さを5くらいに減らすことになった。
もちろんクリスの糞にも瘴気があるのだが、それはたった1%にも満たない量までに分解される。
その為、この土地の瘴気はクリスによって徐々に弱められていくことになった。
では何故クリスが瘴気を多く含んだ草を食べたのか?
ホワイトバンビであるクリスの味覚を人間の味覚に変換することによって何故好んで食べていたのかわかる。
瘴気を含んだ草……複雑かつ濃厚な味つけで美味しいメインディッシュにあたる。
雑草……主食(米やパン)のようなものにあたる。
毒草……甘味があるのでデザートのようなものにあたる。
麻痺草……少し辛く味のアクセントにあたる。
薬草……ただの苦いものでホワイトバンビには薬にも毒にもならない。
聖草……ただただ無味なもので、ある意味薬草よりも人気がない。
こんな感じなので、ドワーフの村にあった瘴気を含んだ草は、毎年一切残らず、美味しくクリスの胃に収められていった。
そして残ったのは、苦手とした薬草と味のない聖草が生えているだけだった。
それにより10年後には、聖草の効果により浄化された土地だけが残った。
もともと聖草には土地を浄化する力があるが、瘴気を含んだ草に栄養分を取られ、こじんまりとしか育たなかったのだ。 それが、クリスにより雑草類がなくなり聖草が大きく生長したことが浄化をさせる一因になった。
だが、当然クリスにとっては好ましくない。
クリスにとっては、美味しくない薬草や聖草が増えたからだ。
その為、クリスはメインディッシュである瘴気を含んだ草を探しに近くの山や高原などへと行き、そこの瘴気も浄化に成功する。
そして瘴気の含んだ草を食べた結果、クリスの身体に変調が起きた。
この瘴気というのは魔素が少なからず含まれており、その草を食べ続けた結果、何時の間にか上位の魔物になっていた。 見た目は一般のホワイトバンビとは変わらずに体内の構造が徐々に変わり、ドラゴンのような長寿命を持つようになった。
とはいえ長寿命以外に変化がなく、また誰もこのことに気が付いていなかった。
そのような訳でクリスは、太郎に付いて行き、その道中も毒草などを美味しく食べ、この世界の食の安全を護っていくことになる。
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