第52話は、ドワーフ村の賑やかな夜。
よろしくお願いします。
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ドワーフの長の自宅にお邪魔する。
ゴンザさんのご自宅は、石造りのしっかりした家だ。
「こんにちは」
「どうぞ、何もない所だが入ってくれ」
『お邪魔します』
「……あ、ホワイトバンビが居るのですが、どうすればいいですか?」
「そこいらに放しておいてくれて大丈夫だ。ホワイトバンビは、害もないし、美味くもないから大丈夫だ。何よりこの村の奴らは、何かしようとする気力すらないからな……」
と、ゴンザさんは少し疲れた表情で言う。
とりあえず、クリスの命の安全は大丈夫そうだ。
間違って食べられては、私の夢見が悪くなる。
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そんなゴンザさんを傍目に、クリスを外に放してゴンザさんの自宅にあがる。
家には、この村の長のゴンザさんと孫娘のレスちゃんが居た。
ゴンザさんと管理者のお爺さんとの会話やこの村の出来事などを話す事にした。
その方が信用もしてもらえるし、安心もして貰えるからだ。
早速、ゴンザさんが話しかけてくる。
「ここにいる村人をどうにかして助ける事が出来ないか?」
「大丈夫です。私が神様から頂いた薬があるので、飲んで頂ければ完治します」
「おぉ……。本当か!有り難い」
そして、ここ数百年でドワーフ族の人口が減少している原因は、一見豊かに見えるこの山が原因である事を伝える。
……で、話していくうちに、どうやらゴンザさんの息子夫婦は、この奇病の原因を探す為に王国まで行って調べているとの事だ。
そんな訳で、病気が治り次第、使いの者を王国に出すとの事なので、早くみんなを治療してレスちゃんの為にも戻って貰い、家族一緒に生活をさせてあげるとしよう。
「なんと……。この山が原因だったとは……」
「正確にはこの山から発生する瘴気ですね。何らかが原因で集まってしまったみたいですね」
「ふむ……。ならこの山が原因ならここから離れれば、解決するのか……」
「いえ、ちょっと待って下さい」
「何か?」
「はい。神さまからは、私がこちらにしばらく住む事によって、この山が浄化されるとの事なので、出来ましたら一緒に住んで頂けませんか?」
「そりゃ、俺達も親から引き継いだこの土地から離れたくないのは山々だが……。また病気にかかっちまうだろ?」
「大丈夫です。神さまが言うには、万が一気力がなくなっても薬があるので、安心との事です」
「ふむ。とりあえず、薬を飲んでみないと返事のしようもないわな」
「ごもっともですね。私としても早くレスちゃんのご両親も呼び戻してあげたいですしね」
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そんな訳で、村に居る全員を集めてもらう事になった。
みんな気だるそうにしている。
とりあえず、万能薬を村人に配る。
ちなみに万能薬は、液体だ。
村人に渡す前に、味の確認をしてみたら芳香剤臭くて何ともいえない味がした。
恵もお紺も飲みたそうな顔をしていたのであげたが、やはり微妙な顔をしていた。
臭いと味はイコールでないのだ。
臭いだけなら芳香剤のようだから受け入れられるんだけどね。
ドワーフの村人達は、だるそうな顔をしながら薬を服用する。
人間というかドワーフさん達もあまりにもだるくなると味が気にならないようだ。
そして服用してから30分ほど経つと、ドワーフさん達の顔に赤みが差してきた。
どうやら効いてきたみたいだ。
更に30分もすると、手をひらいたり握ったりして手の感触を確かめているみたいだ。
そして、それくらいになると、話し声も聞こえてきた。
集まった当初は、幽鬼のような感じでただ集まれと言われたから仕方なしに来ただけだったのだが、1時間も経った今では、先程と全く違い表情がしっかりとある。
もう無表情ではないのだ。
この様子を見て、ゴンザさんは喜んだ。
こんな活気のあるドワーフを見た事がないのだ。
当然、この村に酒などない。
祖父の代くらいから、気力がなく飲まなくなったようだ。
だから、ドワーフの皆さんは酒好きという私のイメージはガラガラと音をたてて崩壊したのだが、今後というか今からは、物語のイメージになるかもしれない。
ちなみに、このドワーフの村人達はあんまりガッチリしいていない。
ドワーフな見た目は、ゴンザさんくらいなもんだ。
ただ、それも今後変わるかもしれない。
ゴンザさんは、村人に活力が戻り、ゴンザさん自身にも活力が漲ってきているのを喜んだ。
そして、明日にでもレスちゃんのご両親を迎えに行くと鼻息を荒くしている。
そんな訳で、今晩は宴会な気分だ。
酒はないけど、ご飯はいっぱいある。
レスちゃんのご両親が王都から帰ってくる際にお酒をいっぱい買って、今度こそ宴会をしようと話になってみんなで食事をとる。
お酒は入らない健全な食事会だけど、テンションだけはお酒が入ったくらいにみんな高い。
その日はドワーフ村にとって本当に久しぶりの賑やかな夜になった。
お読み頂きありがとうございます。




