第3話は、芸術と勘違いは爆発すると相場は決まっているとの事。
宜しくお願いします。
「そうか。ありがたい」
管理者のお爺さんは、満面の笑みで私にお礼を言う。
「じゃが、このまま行かれて死んでしもうても困る」
管理者のお爺さんは、悩み出した。
何やらブツブツと独り言を言っている。
時折『これなら!』とか『いや……無理だな』など、かなり悩んでいるみたいだ。
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そして、しばらくすると考えがまとまったようで、私に話しかけてきた。
「待たせてすまなんだな。これから行く世界には、先ほど話したように色々な種族がいるのと同時に、お主の住んでいた世界と違って、魔法というのがあるのじゃ。それでじゃな、いくつかの魔法と持ち物を渡そうと思う。それと、お主に預けて育てて欲しいものがあるのじゃ。すまんが宜しく頼む」
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そんな、お爺さんは綺麗な虹色の卵を私に渡した。
大きさは、サッカボールくらいで少し温かく命の鼓動がする。
「この卵は?」
「それは、竜の卵じゃ」
「竜の卵ですか?」
ついつい驚いて鸚鵡返しをしてしまう。
「これはな、これから行く世界を司る竜の卵じゃ。ある理由から私が預かってきたが、それもそろそろ孵る。ほら見てみるがよい」
話が区切られるのを待っていたかのように、卵にひびが入る。
そして、卵から孵ったのは白銀に輝く可愛らしい竜。
竜は、私をじーっと見るとペロっと私の手を舐めた。
うん、可愛い……な。
孫より可愛いかもしれないな。
「一緒に居ると、癒されますね」
「そうじゃろ。そうじゃろ」
「ただ、こんなにも人に慣れていると、攫われてしまいませんか?」
「大丈夫じゃ」
「本来は、こんなに人に慣れんからな。それに実をいうとな、この竜は本来あちらの世界では一匹しか生まれんのじゃが、何故か今回二匹生まれてしもうた竜なのじゃ。既にあちらの世界では一匹おるから、この子は、運命に縛られない自由な子じゃな」
「だから私に預けるのですね」
「それもあるが、この子も竜よ。竜は千年の寿命を持つ種族よ。そして向こうにいる世界を司る竜と比べて何ら遜色もないくらいに力を持っとる。生き方次第では、あちらの竜より強大な力を持つかもしれん。そんな竜を放してしまえば、さらに向こうの世界の崩壊が早まるかもしれん」
「……でも、殺したら可哀想ですよ」
竜の赤ちゃんは、そんな会話などわからないので、私の手をペロペロ舐めている。
……この子が強大な力を持っているとはねぇ……ある意味、強大な力を持っているが。
そう……残念ながら私の心は、既に竜の力で蹂躙されて陥落している。
「そうじゃ。殺すのは可哀想じゃ。それにな……それだけの強大な力があれば、向こうの世界の崩壊を止められる可能性があるのも事実じゃ」
「確かにそうですね」
確かにこの可愛い竜の力で、皆の心を蹂躙すれば、魂が桃色になる事は間違いないな。
……そうか、管理者のお爺さんは私に『愛の伝道師の先生』になって欲しいのですな!
「わかりました。この竜の子を立派に(とても可愛らしく)育てあげてみせます」
「おぉ!そうか。この竜の子を立派に(正しき方向を持った力を持った世界の守護者)育ててくれるのじゃな」
「お任せ下さい。ところでこの子は、男の子ですか?それとも女の子ですか?」
「女の子じゃな。竜の雌は魔法に優れとる。立派に(力強き女王)育てて欲しい」
「わかりました。私が立派に(プリティな魔法少女)育てあげます」
確か孫が小さい頃、女の子は魔法少女に憧れていた気がする。
……まさか異世界で、私が魔法少女を育てる事になろうとは……人生の分岐点はどこにあるかわからないな。それがまさか死んだ後にまで分岐点があるとは……。
だが……!私は、この子を立派な魔法少女に育てあげてみせる。
これは、もう私の生き甲斐だ。管理者のお爺さん、感謝します。
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「一つお願いがありますが宜しいですか?」
「なんじゃな。出来うる限りの要望には応えるぞ」
「この子ですが、人と竜のどちらにもなれる様にして欲しいのです(竜のままだったら、魔法少女とは言えない思うから)」
「そうじゃな。(強大な力を持つ竜だと目立つ事を恐れてじゃな)わかった」
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そういうと、管理者のお爺さんは、竜の子に手をかざした。
そうすると、温かな光が竜の子を包んだと思ったら、そこには銀色の髪をした女の子どもがいた。
「本当なら、まだ赤ん坊じゃが、お主には乳が出ないから乳離れのする三歳にしておいたぞ。この力を使えば大人にする事も出来るのじゃが、そうすると大きな身体をした中身は子どもになってしまうのでせんのじゃ」
「確かに、愛情を貰わずに大きくなってなってしまったら、人を思いやる精神がなくなってしまいますからね」
「その通りじゃ。この子には、立派(世界を守る竜)になって貰わなければ困るからの」
「そうですね。立派(可愛いらしさ満点の魔法少女になって世界を鷲掴みする)に育てないといけませんね」
私は、女の子を抱っこして髪を撫でながら、何て名前にするか考え始めた。
髪の毛が銀色だから『お銀』にしようか……その名を使ったらイケナイ気がした……
向こうに行ってからゆっくり決めてもいいかな。
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「そういえば、先ほど始めに言った魔法と持ち物を渡そうと思うがそろそろいいかな?」
すっかり、竜の子の名前を決める事で頭がいっぱいになっていた私は、お爺さんの声で我に返ったのだった。
お読み頂きましてありがとうございます。
次話は、4/30 12時予定です。