第23話は、森に住むことになりました。
宜しくお願いします。
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恵とお紺に連れられて、傷ついたラミアが、ズルズルと体を引きずるようにしてこちらにやって来た。
このラミアという種族は、全員女性の種族である。
上半身が女性で、下半身が蛇であり、普段なら下半身の鱗がとてもキレイと云われている。
だが、身体のあちこちに傷をつけて、下半身の鱗も少し剥がれている彼女を見ると大変心が痛む。
その彼女が
「……私の……子ども達は?」
苦しそうな息遣いで、自分の状態も省みずに我が子の安否を気遣う。
種族は、どうであれ自分の子は可愛いのであろう。
「こちらに居るから、あがっておいで……」
「そちらに我が子は居るのですか」
「今、みんな疲れて寝ているから、静かに……」
恵とお紺の後に付いて、ラミアが家の中に付いて来る。
本来なら警戒をする筈なのだが、我が子の安否が気になりそれどころじゃないんだろう。
傷だらけの身体を引きずりながらも、部屋に案内され我が子を見る。
そして、目で人数を数える。
「みんな居る……」
そして、彼女もまた失神した。
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【親ラミアの回想】
人間が森にやって来ました。
人間は、普段も森にやって来るので、特に珍しくもないのだけど……。
何時もの人間の格好と少し違いますね。
そこに違和感を感じたのです。
『このままだと、いけない』と、本能が私に告げるのです。
私は、すぐ子ども達の所に戻り、逃げるように言ったのです。
『お母さんは?』
子ども達は、当然疑問に持ちます。
「どうしたの?」
「どこに行けばいいの?」
「何で逃げないと行けないの?」
「お母さんも一緒?」
普段なら、この質問に答えられたでしょう。
ただ今回に限っては、私の直感であり、上手く答える事が出来ません。
そして、その時間が迫っている事を感じたのです。
…………北に行かせなさい…………
「北に行きなさい!」
何故、その様な事を言ったかよくわかりませんが、私に囁かれたような声を聞いて咄嗟にそう言ったのです。
それから、直ぐに人間達が来ました。
それは、私の普段見ている人間達と違って、禍々しい雰囲気のする人間達でした。
『おい、お前の子どもはどこだ?』
「答えると思っているのですか」
『ならば、身体に聞くしかないな』
私と、その人間達の戦いが始まりました。
一対一の戦いなら、そう遅れを取る事はないのですが、今回の相手は五人。
しかも、荒事に慣れているらしく、私はどんどん劣勢に追いやられます。
そして、その中の一人が
「こっちに、違う形跡があるぞ!」
と言って、そちらに向かおうとしています。
「させません!」
「うるさい、邪魔だ!どけっ!」
しかし、私は人間達に吹き飛ばされ気を失ってしまったのです。
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そして、三十分ほどしてからでしょうか。
辺りを震撼させるかのような凄まじい咆哮で私は目を覚ましました。
我が子は無事なんでしょうか?
そんな思いで、傷ついた身体にムチを打って探し始めました。
私は、どうでもいいから子ども達だけでも……。
それから三十分ほどして、女の子とキツネが私の前に現れました。
私の子ども達を預かっているので来て欲しいとの事です。
藁にも縋るような気分で、その子達に付いていきました。
そして、付いた先に人間がいました。
先程のような禍々しいした雰囲気とは違う、何時も森で会う人間と同じような空気を持った人間でした。
ああ……この人なら大丈夫だ。
本能と直感の二つが私に告げています。
「こちらに居るから、あがっておいで……」
「そちらに我が子は居るのですか」
「今、みんな疲れて寝ているから、静かに……」
私は、導かれるまま人間の後に付いて行って我が子と対面しました。
子ども達は、柔らかそうな敷物の上で寝かされています。
寝息は、穏やかなものでした。
それを見て私は、身体の力が抜けました。
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私は、ラミアのお母さんの治療をしている。
治療といっても、救急箱に入っている消毒薬で傷口を消毒しているだけ……と、云いたいが……。
この救急箱に入っている医薬品(消毒薬)の効能がすごいのだ。
何がどう凄いかというと、消毒薬をつけたら、そこから傷口が治っていくのだ。
……なので、消毒薬しか使わずに済んでいるのだ。
他に包帯なども完備されているが、これらは使う時がくるのだろうか?
で、極めつけが、瓶に入っている錠剤で『万能薬』と書かれている。
私は、そっと救急箱のフタを閉じた。
私は何も見なかった……。
……で、私がラミアのお母さんの治療を終えた時、懐かしい声が頭の中に響いた。
(太郎殿、聞こえるか?)
「管理者のお爺さんですか?」
(いかにも。管理者の爺よ)
「ラミアさんの事ですね」
(話が早くて助かる。そのラミアの件じゃ)
「ネコミミさん達と同じようにすればいいですか?」
(すまんのう。それと、この森の事も頼まれてくれんか?)
「……と、云いますと?」
(この森もどうやら、環境がよろしくない)
「何となくわかります。ところで先程の人間達の事ですがわかりますか?」
(ふむ。冒険者崩れだな……。魔物の子どもを攫って売っていたみたいじゃ)
「……で、その者達は?」
(安心せい。運を根こそぎ取っておいたわい。今後、普通に生活するのも厳しい事じゃろ)
「魂が崩れてもよろしいのですか?」
(彼らは、色々な者達に憎まれ、その憎しみが魂を囲って、次の転生をするには手遅れの状態じゃ)
「人からの憎まれても、転生が難しいのですね?」
(当然と云えば当然の結果じゃな。謂わば『自業自得』と云ったところじゃな。……と、まあそんな訳であやつ等は、もうお主の前には現れんじゃろ)
「それを聞いて少し安心しました」
(あぁ、それと竜の咆哮が聞こえたとここいらで噂になっておるから、冒険者達もおいそれと近付けないじゃろな。そのうち、国も動くじゃろ)
「……そしたら、この森と一緒に生きていた人達はどうなってしまうのでしょう?」
(ふむ。なら、わしが巫女を通じてこの付近の者達が今後も生活出来るように上手くやっておこう)
「それなら問題ないです」
(では、すまんが頼むぞ)
「はい」
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こうして、私達はしばらくこの森で生活をする事になった。
あっ……、恵とお紺が私を変な目で見ている。
とりあえず誤解を解くために、先程の話を恵とお紺に話した。
お紺に関しては、元々が森暮らしだったので、飛び跳ねて喜びを表している。
こうして、私達は森に住む事になったのだ。
お読み頂きありがとうございます。
次話は、6/3 11時予定です。




