おれの寿命にピンチが到来
「ここはどこなんだ?」
「そうですねぇ、裏の世界といった感じでしょうか。もっとわかりやすく言うと魔界的なものですね」
「そうか・・」
「あまり驚かれないんですね。」
「まぁ、目の前に翼の生えたもんが現れた後だしな。」
「あらひどい言いかたですね。私は助けに来たんですよ。いわば命の恩人候補なのに。」
彼女はわざとらしく口を膨らませていたが、おれは無視して話を続けた。
「で、これでどうやって俺を助けられるんだ?」
「そうでしたね、これからご主人様にはここにいるモンスターを倒してもらいます。」
「えええええ無理無理無理そんなんできないだろ。第一なんでモンスターを倒さなきゃいけないんだよ。天使なんだから魔法とかで救えねえのかよ」
「無理ですよぉいくら天使でも万能じゃないんですよ。自分で頑張ってくださいよぉ」
「お前が使えない奴だってのはわかった。でもなんでモンスターを倒すんだよ。十日たつより先に死ぬわ」
「ああそれはですねえ、ここではなぜか倒した生き物の生命えねるぎーの分自分のが増えるんですよ。大丈夫安心してくださいちゃんと弱いのもいますから・・・たぶん・・」
「最後の多分ってなんだよ。」
「まぁまぁ。あっほらそこにいかにも弱そうなスライム的なものがいるじゃないですか」
「いやだから無理だって。俺運動てんでだめなんだぞ」
「しょうがないですねぇ。じゃあ奥の手を教えましょう。なんかそれっぽい魔法を唱えてください」
内心めちゃくちゃ不安でいっぱいだったがもうやるしかないと思いとりあえず唱えてみた。
「え・・えっと・・メ・・・メテオサンダー・・・」
その瞬間スライムにこれでもかというほどの雷撃が食らわされ、スライムはそこで炭となり消え去った。完全にオーバーキルだろ・・・。
「お・・・おおおおおおおおおおおおすっげすげえよこれえええ」
俺のくすぶっていた魂が再び燃え盛ってしまった。いや男子だったらこの状況燃えずにはいられないだろう、だって自分の力で魔法が使えるんだぜ。中二心が荒ぶるのもしょうがないってもんだ。
「いっけええライジングサンダーーーー」
「凍りつけブリザードブラッドおおおお」
「吹き荒れろストームハートおおおおお」
いやあ面白い、面白いおれは調子に乗ってどんどん魔法を放っていった。あたり一面は荒野と化すほどだった。・・・しかしなんか息切れがするな?
「はぁはぁ・・いやあこんなのが使えるようになるなんて。使えない奴なんて言ってごめんな。」
おれは反省した。こいつは本当におれの天使なんだと、今までの態度は失礼すぎた。ただなぜだろう、彼女は少し震えている気がする。
「そのぉ、いまさらどうこうなるものでもないんで、怒らないで聞いてくださいね?」
「なんだよ、もう怒ってないし安心しろって。ほんと、お前に会えてよかったよははははははははは」
しかし、彼女の声はどんどんかすれて、ついには泣き声になってきた。
「そのぉ言い忘れてたんですけど・・・・魔法を一回使うと生命エネルギーを消費するんですよ・・・・・・今の感じだとすでに五日間ぶんは減ったんですけどぉ・・・」
「え・・・・・ええええうっそおおおおお、あっでもさっきスライム倒したし少しは回復してんだろ、どのくらいだ?五日分か?十日分か?」
「二時間くらいです・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「ええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええ」
「で、でもですね。モンスターを倒すと報酬がもらえるんですよ」
「おおなんだって」
たしかにスライムのいたところにきらきら光るものがあった。
「金かな、銀かな」
「いや・・そんなに・・」
彼女の声を聴くより先にそこに駆け寄った。
「はい?・・・・・」
そこにあったのはジュースの王冠だった・・・
「おい、ふざけんなよ!!一瞬でもお前をいいやつだと思ったおれがバカだったよ、お前本当に使えねえな、すでに天使じゃなくて死神だよな?おれのこと殺しに来たんだろ」
「大体にしてご主人様がいけないんですよ。魔法がそんな簡単に使えるわけないじゃないですか、言いましたよね奥の手だって、それに、スライムごときで金が出るわけないでしょうが。等価交換っていうのを知らないんですか?」
「そんなこと言ったらスライムどうやって倒すんだよ?二時間生きるのに一日減ってくじゃねえかよ」
「あんなの蹴れば死にますよ。ご主人様がびびっているから教えたんじゃないですか」
「逆切れじゃねえかよ。もうお前となんて一緒にいられるか」
「本当にいいんですか?今すぐ元の世界に帰すことだってできるんですよ?あと五日間しか生きられない体のまま」
困った。いや死んでもいいとか言ったけど本当にそうなったらためらう。あんなモンスターや魔法を見せられていまさら嘘だとも思えないしな。
「いや、ちょっと待ってくれ・・・」
「いやですね、私の心はもう深く傷ついたんですちゃんと謝ってください」
うっざ。とてもうざい、顔面殴ってやりたくなった。しかしそんな気持ちをぐっとこらえておれは地面に頭をつけた。
「その・・・・ごめんなさい・・・」
しかしなんでおれは謝ってるんだろうか、悪いのはあいつのはずじゃないか。しかしおれもも大人だ落ち着いて少しくらい許す気持ちでだな・・・・
「聞こえませんねぇもっと大きな声で言ってくださいよ」
前言撤回だ
「てめえは調子のんなよ いいよ帰ってやんよ」
その時また彼女の声がかすれてった。
「えっ・・・謝れば許すって言ってるんだから素直に謝りなさいよ」」
「いいよ、別にもう」
「いやその・・そうなると私も・・そのぉ・・・」
なんだろう?なんか様子が変だ。
「まさか、おれがいないといけないとか」
「ええっべべべべ別にそういうわけじゃ・・・・ない・・です・・・・うわああああああああああん」
泣いた。もうそれは号泣だった。ここまで泣かれるとこっちが悪いみたいだ・・
「まあよくわかんないけどそんなに言うんなら一緒にいてやるよ」
まあこんな感じにおれの人生はいっきに変わっていった。