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紳士は異世界でメイドハーレムの夢をみる 作者:むらのとみのり

第五章

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味噌汁

 次の日の昼時。
 裏庭からいい匂いがするなと出てみると、匂いの元はチョコ屋妖精パロンの作業場だった。
 ノコノコと匂いに引かれていくと、パロンが七輪で魚を焼いていた。
 こっちの世界の妖精は、妖精というより妖怪の方が近いんじゃないのか?
 実は狐か狸が化けてるんだったりして。
 などとマヌケなことを考えながら寄っていくと、隣にパン屋のエメオもいた。

「よう、うまそうだな」
「あらぁ、サワクロさん。先ほどぉ、モアノアさんに鯖の塩漬けを頂いたのでぇ、焼いてるんですよぉ」
「七輪もあるのか」
「これもそちらからぁ、お借りしたんですよぉ、この辺では炭もなかなか手に入りませんしぃ」

 そういやうちに七輪があったな。
 炭の匂いが料理には不評なので、エレン達の火鉢ぐらいしか使ってないんだった。

「炭ってこんな独特の臭いがするんですね。燻製ともちょっと違うし」

 と、隣で鍋をまぜていたエメオ。

「そっちはなんだ?」
「えーと、味噌汁だそうです。サワクロさんも食べます?」
「ほほう、最高だな、いっぱい貰おうか。ご飯はあるのか」
「お米はぁ、もう切れそうなのでないですぅ」

 とパロン。

「どっかから仕入れられないのかよ」
「前に住んでいた街ではぁ、緑のおばさんが売りに来てくれたんですけどぉ、こっちに来てからはご無沙汰でぇ」
「なんだ、その緑のおばさんってのは」
「緑の服を着たおばさんですよぉ。妖精の里の近くまで出入りしてた商人でぇ、お世話になってましてぇ」
「そういう人がいるのか」

 なら、その人を探し出せばどうにか。

「名前はなんていうんだ?」
「緑のおばさんですよぉ」

 それは名前じゃないだろうと思うが、埒が明きそうにないな。

「それにしてもうまいな」

 具に野菜がちょっと入ってるだけで、具沢山の味噌汁で育った俺には物足りないが、十分うまい。

「ほんと、この味噌汁というのも美味しい。最初は鼻につく匂いが気になったけど、すぐに慣れましたし、これなら毎日食べたいです」

 とエメオ。

「全くだな。野菜ばかりじゃ物足りないので、今度ウチの豆腐を持ってくるからまた作ってくれ」
「いいですよぉ、味噌汁ぐらいならぁ作りますぅ。もっとも味噌ももうあんまりないんですけどぉ」
「どうにかしてくれよ」
「どうにもなりませんねぇ」
「しょうがねえな。こんなうまいものを毎日食わんでどうするよ」

 などと言いながら味噌汁をすする。

「そういや、俺の故郷じゃ『君の味噌汁を毎日食いたい』ってのがプロポーズの定番フレーズだったなあ」
「ぶーっ!」

 と吹き出すパロン。

「な、なんじゃわれ! わ、わしをどうするつもりじゃ!」
「いや、別にどうというわけでは」
「わ、わしゃ嫁にも従者にもならんからな! 人間の風習なんぞには惑わされんぞ!」

 それを聞いたエメオが、

「あの、もしかしてパロンさん、ほんとに人間じゃないんですか?」
「な、何言うとんじゃ! どこからどう見ても、に、人間じゃろうが! じゃよな?」

 と頼りなさそうな顔で俺の方を見るが、気が付かないふりをして味噌汁をすする。

「そうなんですけど、サワクロさんの周りっていろんな種族が集まってますし、それにパロンさんって、なーんか言動が変ですし……」
「そそそ、そんなことないわい! アホかボケ、何寝ぼけたことぬかしとんじゃい!」
「じゃあなんで嫁にも従者にもならないなんて……、サワクロさんはこう見えてもすごい人なんですよ?」
「はん、紳士なんぞ興味あるかい! こいつなんぞ、ちょいと顔が光っとるだけじゃい、光るだけならホタルのケツも光っとるわ」
「む、紳士様と知ってて歯牙にもかけないってのは、やっぱり普通じゃないと思います!」
「そ、そ、そんなもん知るか! 好いた張ったはタブーなんじゃい、そんなことしてみい、たちまち……」
「たちまち?」
「う、うるさいわい! そんなに紳士がええなら、われが従者にしてもらえばええじゃろが」
「なっ!? わ、わたしなんて、無理です! 考えただけでも恐れ多い……」
「なんでやねん、古代種ちゅーんは従者になるもんちゃうんかい」
「でも、私は……」
「はん、こいつが角ぐらい気にするようなタマか! 蛇までおるねんぞ!」
「つ、角のことは関係ないでしょ! っていうか、蛇ってなんですか!」
「蛇は蛇じゃ! とにかく、従者ならわれがなったれや」
「いいえ、パロンさんがなるべきです!」
「なんでわしなんじゃ、わしゃ知らん!」
「私だって知りません!」

 そういう話は俺に聞こえないところでやってほしいよなあ、と思うんだけど、気にせず焼き鯖をかじりながら経過を見守っていたら、不意に二人共俺がいたことを思い出したようだ。

「あ、サ、サワクロ…さん、聞いてたんですか?」
「ちゃ、ちゃうぞ! わしゃそんな気はないんじゃからな! こいつが勝手に!」
「わ、私も別に、そんな、その……」

 動揺する二人も可愛いが、俺は皿の上の鯖を指差してこう言った。

「早く食べないと鯖が冷めるぞ。脂が乗っててうまいから、早く食え」
「は、はい、い、頂きます、もぐもぐ」
「ふん、元々わしのもろた鯖やんけ、くそう、なんじゃい、くそう、うまいのう、もぐもぐ」
「うむ、うまいなあ、もぐもぐ」

 あとは黙って三人で鯖を食い続けた。
 冬の鯖はうまいなあ。
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