表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/7

表題『炬燵』

「……先輩」

「何だい?こーはいくん」


もう耐え切れない。

何度もぶつかっては離れていくその感触。

既に疲れて互いに重なり合ったままだ。


「この炬燵、狭いっす」

「……ほぼ一人用だからねぇ」


そう、炬燵。

ボクと先輩は、小さな炬燵に対面から座っている。

炬燵の中では、僕の足の上に当然のように先輩の足が乗せられている。


「おや、ミカンがなくなってしまった。こーはいくん」

「先輩が足をどけてくれるなら、僕が行ってもいいのですけど?」

「……なら仕方がないな」


どけてくれるのか?と思いきやむしろ足を絡めてくる先輩。

僕はため息をつきながらジト目で先輩を見る。


「ミカン、いらないんですか?」

「ミカンよりこーはいくんが欲しいのさ」

「……」


この人はもう、何なんだろうか。

いつもの優しそうな微笑みに、若干の意地悪な笑みが混ざったように見える。

ああいや、耳が赤くなっている。


「……耳」

「うん?」

「赤くなっていますよ。寒いんですか?」


一瞬キョトンとしたような顔を作った先輩に、僕は一抹の優越感を得る。


「……君は、いぢわるだな」

「僕も最近気づきました」


炬燵の中、さらに先輩が深く潜り込んでくる気配がする。

負けじと、僕も炬燵に潜り込んでみる。


「こら、狭いじゃないか」

「先輩が潜り込んでいくからでしょ」

「君こそ潜り込んでいるじゃないか」


口ではそう言い合っているものの、炬燵の中ではより一層足を絡め合っている。

僕の足が下にあるのは先程から変わらないけれど。


「先輩」

「……何だい?」

「足がしびれてきました」

「我慢したまえ」


即答された割に、少しだけ足にかかる負担が減った気がする。

同時に、ホンの少しの寒さが感じられた。

炬燵の出力を上げるか、そう思い電源を見る。


「あれ?先輩」

「うん?」

「炬燵の電源、入ってないですよ?」


そう、出力の問題以前に、電源が入っていなかった。

どうりで、寒さを感じたわけである。


「んー、でも二人で入っていると暖かいだろう?」

「それは、そうですね」


実際、電源を見るまで炬燵が動いていないと気づかなかった。


「電源、付けるかい?」

「……いや、やっぱいいです」


……その方が、お互いの暖かさを認識できるから。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ