表題『ランプ』
しゅっ、ちりちりちり……ぼぅっ。
「それは……ランプですか?」
「ああ、街の骨董品屋で見つけてな」
レトロな雰囲気の照明が僅かな光で、薄暗い部室を照らしている。
「マッチ棒は……牛乳瓶でいいか」
「ちゃんと後で捨ててくださいよ?」
「わかっているよ」
ランプに火を灯したマッチ棒を牛乳瓶にいれ、さらに水を貯める先輩。
「でもランプって、なんでそんなものを?」
「電気を付けるほど目立たないし、夜にこの部室に立て篭るのにはいいだろう?」
「まず立て篭ろうとしないでください」
第一ランプでも外から見えるのは変わらない。
「いいじゃないか、夜の学校。七不思議に星空観察、肝試しに夜景観察」
「結局言ってることは怪談か夜景観察だけじゃないですか」
「……夜勤の先生との追いかけっこもあるぞ?」
「見つかってるじゃないですか」
「それも一興」
時々この先輩は何を言っているかよくわからなくなることがある。
まあ、人生楽しんでいる感はとてもあるからいいのだけど。
「なんだそのバカを見る目は?」
「馬鹿にしてなんていませんよ?まだ」
「まだ!?言っておくが成績も何もかも大体君より上だぞ私は」
そう、何やらせてもスペックが高いのが不思議さに拍車をかけている。
僕は基本的に平均くらいなので、少なくとも先輩はそれ以上にいるわけである。
「まったく、君ほど私を敬わない子も珍しい」
「僕の前以外では猫かぶってるじゃないですか」
「……ふ、それだけこーはいくんが特別ということかもしれないよ?」
ゆらゆらと揺れた灯が先輩の横顔を照らす。
黙っているだけならホントに美人なんだけどなぁ。
だからそうやって誘うようなことを言うのはやめてください。切実に。
ランプの炎が一際大きく揺れる。
「はいはい、もうランプが切れそうですよ。燃料補給したんですか?」
「あれ?そういえば買ってそのまま持ってきたから補給してないな」
ぶすぶすと音をたてて消えてしまうランプ。
中を覗き込むと、見事に火を灯す紐が焼き焦げてしまっている。
「あぁ、これは買い替えですね」
「わかるのかい?」
「まあ、これだとうまく灯がつかないですから」
マッチで何度か火を灯そうとする先輩。
しばらく続けていたが10回を越したあたりで諦めたようだ。
「まあ、この型なら専用のものがあの骨董品屋で売っていますね」
「……なぜ知っている?」
「昔こんな感じのものに凝っていた時期がありまして」
「ふむ。」
急に黙り込んで考え込む先輩。
「どうしました?」
「……よし、これから骨董品屋行くぞ」
「はぁ、いってらっしゃい」
「君に教えてもらおうか」
僕の手を掴んで引っ張っていく先輩。って。
「せ、せめて準備させてくださいよ!?」
「そんな暇はない」
「断言!?」
「こーはいくんが教科書を持って帰っていないことは知っている!」
事実だけども!?
あ、ちょっとまって先輩!?