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何なの?馬鹿なの?君たち死ぬの?

 

難しいです。ファンタジー。

気を抜くと、登場人物たちの名前が、皆似たりよったりになります。

え、何?こいつら皆兄弟?みたいな。


自分のネーミングセンスのなさに、寒気がしました。


そして先ほど気付いたのですが、「お気に入り1件」

あ、あああああありがとうございます!

まさかこんなに早くお気に入りに登録してくださるとは!?

どこの心優しき神ですか!?


涙で前が見えないや。

心より、御礼申し上げます。





「アベルー!依頼の品、ここに置いておくからー!」

「了解!」



街の周りを砂漠に囲まれ、農業が発達しているウェルダンというこの街で、

アベルと呼ばれた少年が、元気よく返事をした。


黄金色のさらさらとした髪に、青く透き通った瞳。

藍色の衣に黒いブーツは、中肉中背の彼に良く似合っている。

しかし一か所だけ気になる点を上げれば、彼の右腕はぐるぐるに

白い布で頑丈に巻いてあった。


砂漠を渡って来た行商人たちが身を休める街、ウェルダン。

城への贈り物や献上品を持った、様々な部族や人間たちで栄えてきた。

近頃は、近々開催される街全体での祭りごとのため、更に活気づいているのだ。




そんな街で生活している少年、アベル・ラング。

エンジニアである母、フィ二ー・ラングと行商人たちのための宿屋を営み、

ついでに依頼事を引き受けると言う、いわゆる『何でも屋』を行っていた。


フィ二ーがつい最近開発した、ゼフォンという魔力を利用した靴を眺めている時、

先ほどの声が彼にかかったのだ。

アベルはゼフォンを持ったまま、螺旋状にくねっている階段をの手すりを

座って滑り、宿屋の一回にある受付へと飛び降りた。


そこでは、母であるフィ二ーが呆れ顔。



「アベル、危ないじゃない!」

「だって、この方が早いんだもん。で、以来の品ってのは?」



やんちゃ盛りのアベルにとって、母親の小言は煩くて仕方がない。

半ば無理やり言葉を遮ってそう問えば、受付の前に立っていたオラッグ族の男が、

スッと箱に入った品物をアベルに差し出した。


オラッグ族とは、岩の様なごつごつとした褐色の皮膚に、巨大な体。

強面の顔面とは裏腹に、シャイな性格が多い種族だ。

服はそれぞれだが、大体薄衣を右肩から羽織っている事が多い。


オラッグ族の男は、アベルの顔も見ずに、モジモジしながら口を開く。



「あ、青海老が入ってるオラ。その海老の瞳が閉じる前に、城へと輸送される

 馬車まで、持って行って欲しいオラ」


「瞳が閉じる前に?」


「瞳が閉じてしまえば、青海老の身が硬くなり受け取って貰えないオラ。

 オイラはすばしっこくないから、たぶん間に合わないオラ。

どうか、お願いしますオラー」




依頼料を差し出して、勢いよくオラッグ族の男が頭を下げる。

ガンとぶつかったカウンターのテーブルに、少しだけひびが入った。

やっちまったオラー。と、頭を押さえ恥ずかしそうに赤らむ、男の頬。


激しく気持ち悪かったが、何とか堪えてアベルはその箱を受けとった。







******




「ほんじゃあ、行きますか!」



魚そっくりの、鱗の皮膚を持つ商人や、嘴がある鳥人族。

人間に交じって様々な種族たちが行き交う中、右手に青海老が入った

箱を抱えたアベルが、ゼフォンを履いた。


この道具の長所は、ブーツを履いたまま履ける所だ。

縁取りのそれに取りつけてある、魔力が取りこまれてある赤い玉を押せば、ヴォンと音が鳴る。



「うおっと!」



地面から数センチだけ浮き始めるゼフォン。

思い切って蹴る様に足を動かせば、物凄いスピードでそれは走り出してしまう。



(あれ?思った以上に難しいんですけど、コレ!)



スピードがコントロール出来ない。体のバランスも取れない。

ぐらぐらと体が左右に揺れ、流れる風景の速さに、軽くアベルは酔った。


止まろうとも思ったが、青海老の瞳はもう半分ほど閉じ

てしまっている。


それでは、せっかく貰った依頼料がパーだ。


避けたい。それだけは、なんとしてでも。その日暮らしのアベルにとって、

これは死活問題なのだ。


ぐっと箱を持ち直し、アベルは気合とやる気にぐっと目を見開いた。





「退いて、退いて、退いてェェェェーっ!!」



果物の籠を持った叔母さんや、剣を持った兵士たちに何回もぶつかろうとしたが、

寸での所で避ける。

だがしかし、急に目の前に現れ出た獣に、思いっきりぶつかってしまった。



「ほげぇっ!」



何とも情けない声を出して、アベルが倒れる。

履いていたゼフォンも、ブーツから外れ地面へと落ちていってしまった。




「いぃってぇー!!え、何コレ。逝っちゃってない?骨、逝っちゃってない?」

「アハハハハ!なっさっけねぇー!見ろよ、よそ者のアベル・ラングだぜ?」




数センチ浮いた所からの、物凄いスピードでの転倒というものは、一瞬笑ってしまう。


笑ってしまうほど、痛かった。



腰を押さえ、ごろごろと悶えているアベルの元に姿を現したのは、

アベルがぶつかった魔獣を引き連れた、グレンダだ。




(何なのコイツ。頭可笑しいんじゃないの、本当に)



まだ立てない。あ、マジで逝っちゃってンのかも。と、アベルは

本気で腰を押さえた。


顔を上げれば、ニンマリと笑っているグレンダの顔。

その斜め後ろには、いつも従えている子分のザック、シアータがいた。

男三人の、街の悪ガキ達だ。



ガキと言っても、年齢はアベルと変わらないのだが、ガキの様な事しか

しないので、やっぱりガキなのだろう。

そのガキの様な事で、腰の骨が逝っちゃったかもしれない自分が、本当に情けない。



まだ痛かったのだが、これ以上無様な姿を晒したくなくて、

アベルは脂汗を掻きながら無理に立ち上がった。




「や、やぁグレンダ。どうしたの?道の真ん中に急に魔獣を放りだすなんて。

 何なの?バカなの?君たち死ぬの?」


「バカなのは、変な道具履いて、絶叫しながら道の真ん中を走ってたお前だろ。

 ここは、ウェルダン人の街だ。よそ者は、遠慮がちに道の端をトロトロ歩けよ」


「「そーだ、そーだ!」」




グレンダのとげとげしい言葉に、すかさず後ろの子分二人が口を挟んだ。

小学生か。と心の底から思ったが、アベルはコホンと一つ咳払い。



確かに、アベルはウェルダンの生まれではない。

ウェルダン人は、鼻が高くとがっているが、アベルの鼻はとがってはいなかった。

では何人なのか、昔母親であるフィ二ーに聞いたことがあるが、はぐらかされてしまった

記憶がある。アベルも、それ以上問いただす事はしなかったのだ。




「退いてくれないか、ガキ大将。その無駄に高い鼻、へし折るぞ」


「何だ、羨ましいのか?俺様はウェルダン人の中でも、

 うつ伏せで寝られない程の立派な鼻を持ってるからな!」


「どんな自慢してんの!?羨ましくないんですけど!むしろ可哀そうなんですけど!」


「まぁ、魔獣の一つも飼っていないお前が、俺様を羨ましがるのも当然だな」



そうグレンダが言えば、グレンダの後ろに立っている魔獣が、ギャオゥ!と唸った。

首の長い、灰色のけに覆われた何とも不細工な顔をした獣だ。

こんな獣、欲しくもなんとも無い。餌代も馬鹿にならないだろう。



もうコイツらアレだ。ただのバカだと、アベルはグレンダ達を無視して転がっている

ゼフォンに手を伸ばした。早くしないと、青海老の瞳が閉じてしまう。

痛む腰を我慢してしゃがむアベル。


だがしかし、グレンダがデゥール!と叫ぶと、魔獣がゼフォンの上に

思いきりそのドでかい足を下ろした。


ぐしゃりと、ゼフォンがつぶれる音。

瞬間に、サーっとアベルの顔色が無くなる。



「ちょ、何やってんのォーっ!?マジで何やってんの、さっきから!

 何なの!?バカなの!?死ぬの!?っつーか、死ねよ!」


「俺も持っていない道具を、お前が持っているの気に食わない」


「どんだけ子供っぽい理由なんだよ!」



爆発しないだろうか、コイツら。

本気でアベルはそう思った。焦る様に箱の中を見れば、青海老の瞳は三分の二

閉ざされている。


城へと食材を運ぶ馬車は、ここからはまだ遠い。

運動神経には自信があるが、到底間に合うとも思えなかった。


もう無理だとがくりと肩を落とした時、すぐ後ろから「ゼグード!」と

という高い声が。



「うわっ!」

「何だ!?」



アベルを包みこむようにして、吹き抜けた突風。

今まで偉そうに仁王立ちしていたグレンダが、まるでゴミみたく後ろに

吹き飛ばされる。勿論、お付きの子分たちも。




(な、何が起こったんだ!?)


恐る恐るアベルが振り返れば、黒いローブに、金色のすみれの紋章。

両手に赤いブレスレットを幾つもつけ、ハニーブラウンの長い髪を靡かせた少女が立っていた。




(・・・・・・魔女?)



可愛らしい顔つきをしているが、彼女はニコリとも笑わない。

そればかりか、つかつかとアベルの隣を素通りし、地面に倒れ込んで

しまっているグレンダ達を、げしげしと踏みつけ始めたのだ。



(ぼ、暴君!!)



何とも恐ろしい光景だった。助けを請うグレンダ達を無視して、

己の全体重をかけて踏みつける。


グレンダ達がアベルの壊れたゼフォン同様、ぐしゃぐしゃになった

所でようやく気が済んだのか、その少女はくるりと振り返った。


びくりと、アベルの肩が震える。



「行きましょう。急いでるんでしょ?」

「う、ぇ?」

「海老」

「あ、ああ。でももう乗り物もないし、間に合わな・・・・・・」

「あら、あるじゃない。ここに」




そう言って彼女が指さしたのは、

グレンダ達が率いていた巨大な魔獣。

何の悪びれた様子もなく、ね?と首を傾げた彼女に、アベルはヒクリと

口が引きつる。



(・・・・・・腰が痛いどころじゃなくなったな、こりゃ)




無理やり背中に乗ろうとする少女に獣は暴れたが、

ドスっという少女の一撃パンチに、魔獣は大人しく従った。



(やっぱり暴君だ!)








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