デミアン | #001
私は、何百年も生きている。重く冷たい鎧は、すでに身体の一部になっていた。ただ時の流れを見続けるだけの存在になっていた。
大聖堂が建っていくのを見た。石が一つずつ積み上がり、やがて巨大な建物へと変わっていく。
人々はその中で祈っていた。だが、その静けさに救いはなかった。
広場で、人が焼かれていたこともある。その匂いは、今でも消えない。
帝国は生まれ、そして滅びていった。それを、私は何度も見てきた。
母親が子を手にかけることもあった。戦争から逃がすためだった。
包囲された街では、人は人でいられなくなる。
騎士は誓いを立てた。学者は灯の下で文字を書いた。だが、それらもやがて消えていった。
私は多くのものを口にしてきた。葡萄酒、血、涙。どれも同じ味がした。塩の味だ。
名前は何度も変わった。それでも、最初の名前だけは思い出せない。
時間は止まらない。ただ、流れていくだけだ。
戦場の死体の中で眠ったこともある。そして、そのまま目を覚ました。
病で村が滅んだ日もあった。私はそこで、食事をしていた。
恐怖は、いつの間にか消えていた。
世界は変わり続けた。蒸気は電気へと変わり、人々はより速く生きるようになった。
だが、私は何も変わらなかった。
何も愛さなかった。何も残さなかった。ただ、壊し続けてきただけだ。
そしてある日、彼と出会った。その瞬間──私は初めて、恐怖を知った。




