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最終章 「記憶の果て、光の中」



あの日から、どれほどの時間が経ったのだろう。

この世界の「朝」は、もう何度も書き換えられた。

僕は――いや、“はるか”は、そのたびに消えていった。


玲奈だけが、最後まで覚えていてくれた。

「あなたは、確かにここにいた」

その言葉が、僕の唯一の“現実”だった。


だが、真実は静かに明かされる。

この世界は“記憶の再構成実験”。

人の記憶を基盤に、新たな人格を創るシミュレーション。

“僕”という存在は、はるかの記憶から生まれた影――

彼女の“もしも”の未来を再現するための、仮想の人格だった。


玲奈は涙を浮かべながら微笑む。

「あなたのこと、忘れない。たとえ世界が消しても」


世界が崩れはじめる。

光が満ち、ノイズが消える。

記憶の断層が重なり、ひとつになる瞬間。


――僕は思い出す。

桜の下で笑っていた少女、

“はるか”という名前を、初めて呼んでくれた声を。


そして、光の中で彼女の姿が見えた。

手を伸ばす。

その瞬間、僕の身体が薄れていく。


「ありがとう、玲奈」

僕の声が、光に溶けて消えた。


次に目を開けたとき、

そこには“彼女”が立っていた。


――春川はるか。

本来あるべき姿で、再び世界に息を吹き返していた。


ただひとつだけ違うのは、

彼女の瞳の奥に、“僕”の記憶が微かに宿っていたこと。


風が吹き抜け、

どこか遠くで玲奈の声が響いた。


「おかえり、はるか。」


そして、世界は再び“正しい朝”を迎える。

だが、誰も知らない――

この世界の片隅に、“僕”の笑顔がまだ残っていることを。


――記憶の果て、光の中。

物語は静かに幕を下ろした。


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