第4話 容疑者
人を操ることができる「絶対ナイフ」を手にした優。果たして彼は、もう1人の所有者を見つけることはできるのか?!
まだ日が昇ってすらいない早朝、優は飛び起きた。
慌てて机の引き出しを開けると、絶対ナイフが入っていた。
よかった、盗まれてない…。
もう一本の絶対ナイフを取り返すと同時に、今あるこの絶対ナイフも守る必要があるのだ。
昨日は姉に絶対ナイフを見られてしまったが、人を操れるという能力はバレてないから問題ない。ただのナイフとしか思われてないだろう。
命令された時の記憶は無くなるなんて、何と便利な道具なことか。まあ、これが敵に回るとなると厄介極まりないが。
今朝のホームルームは異常だった。時間になっても担任の剛田先生が来ないのだ。剛田先生は生活指導の学年主任で、遅刻には特に厳しい。そんな先生が連絡なしに、一向に現れないのだ。当然クラスは困惑する。
「おいおい、剛田〜。大丈夫かよーw」
和田武次郎が声を大にして言う。どこか楽しそうだ。
「みんな!僕たちが呼びに行くから、それまで自習しててくれっ」
そう言って立ち上がった2人は、学級委員の真矢司と相沢南。クラスのリーダーというやつだ。彼らの力は凄まじく、クラスが一気に静かになった。あの和田も、2人には敵わない。
優は自習どころではなく、絶対ナイフのことで頭がいっぱいだった。
もう一本の絶対ナイフを探すといっても、唯一抑えた犯行現場はスクランブル交差点…。それでは手がかりはほぼゼロといって等しい。
仕方ない。地道に犯人を追っていくしかないな。長い道のりになりそうだ・・・。
ガチャッ、ガラガラー
学級委員に連れられて、ようやく剛田先生が入って来た。さらにその後ろに、副担任の金沢先生もいる。2人とも、なにやら元気がない。どうしたのだろう。すると剛田先生がようやく口を開いた。
「えー、私たち。本日を持ちまして辞職することになりました。」
!!
クラスが一気にざわめく。学級委員の2人も口が空いたままだ。その時、教頭先生が息を切らして教室に入って来た。
「剛田先生、それに金沢先生!辞職するというのは本当ですか?!なぜそんな急に…。困りますっ!」
剛田先生と金沢先生は2人とも、下を向いて黙っている。
自体の異変に気づいた優は、まさかと思い2人の小指へ目をやった。
悪い予想は当たり、両者とも小指に傷がついていた!
え?!
僕の高校が犯行現場だと?!
そういえば、絶対ナイフは高校の近くで拾った。
まさか?!
犯人も、僕と同じ東準高校の生徒の可能性が?!
そして担任、副担任が被害者であることから、絶対ナイフを所有する犯人はクラスメイトの誰かかもしれない!
でもなぜ?!こんなことしたら、怪しまれるだろ。
…。いや、知らないんだ!全部で二つもあるなんて!
犯人が拾ったのは僕の後で、すでに絶対ナイフは一つしかなかった。つまり、自分しかナイフのことは知らないと思っているんだ!!だからこんな大胆な行為もやってしまう。
しめた!日本中の容疑者から、一気にクラスメイトへと犯人を絞り込めたぞ!
犯人はまさか追跡者がいるなんて思いもしないだろう。やった!もう一つの絶対ナイフを取り返せるかもしれない!
次回、新たな敵現る?!