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夜桜みる夢。恋花火。  作者: 楡崎夏芽
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夜桜の見る夢。

夜桜が綺麗だった。延長保育で、街灯の灯る園庭に桜の花が咲き誇っていた。あれから、いくつかの月日が流れていた。母子家庭の帰りを待つ、優奈の乗るブランコの上にも、桜が咲き誇っていた。

「優奈ちゃん。中、入りなさい。寒くないの?」

「大丈夫!寒くないよ。」

優奈は、声をあげた。

「桜見てるの!綺麗。」

「風邪ひくと、また、お母さん。大変よ。」

せっかく、新しく決まった就職先を子供の具合が悪いという事で休むのが、大変な事を先生達も知っていた。

「もう、少しだけ、見てる。ママも、もう少しでくるよね?」

見上げる桜は、夜空に光ってみえた。あれから、結局、悦史と凛は、うまくいく訳もなく、話し合いの末、別れた。月に一度優奈に逢わせるという事で、別れ、凛は慰謝料ももらわなかった。翔とも、全く、逢う事はなかった。やっと、とった連絡は、別れの話だけだった。あの、雨の駐車場でした電話だけのやりとりだった。優奈の待つ保育園へ、急ぎながら、凛は考えていた。悦史と別れて、月日の経った今、翔とやり直す事が出来るのではないだろうか?ふと、寂しいくなった時、思う事があった。でも、それは、あまりに、都合が良すぎる。翔を傷つけた。言い訳をするなら、本気で翔を愛していた。だが、未来のない愛だった。翔の言うとおり、自分の都合で、翻弄し、翔を傷つけたまま、別れた。都合良く、ヨリを戻す訳にはいかない。彼の人生にかかわる事はあってはいけない。彼の事は、とうに諦めた。諦めても、一緒に居られなくても、出来る事はある。彼を思う事は出来る。彼との思い出だけが、凛を暖めてくれる。彼をとおく、思おう。もう、彼への思いに苦しむ事もなく、罪悪感に責められる事もない。どこかで、彼が幸せでいてくれれば、いい。それだけ・・・。

「優奈?」

優奈は、ブランコに居た。満開の桜が、散り始めていた。

「ママ!」

凛の姿を見て、優奈が駆け寄ってきた。

「ねぇ!ねぇ!ママ!桜って、おねんねしないの?」

そおいえべ、さくらは、ずーっと、咲き誇っている。

「そうね・・。桜は、ずーっと、咲いてるわね。」

夜桜が、綺麗だ。遠くで、季節はずれの、花火が上がっていた。

「花火だ・・。」

小さな背伸びを優奈はした。

「花火みたいに、すぐ、散っちゃうから?」

「えぇ?」

凛は、座って、優奈を見上げた。こんな事を言えるほど、子供は成長している。

「桜も花火みたいに、すぐ、散っちゃうよね・・。ママ。」

「優奈。大人になったのね。」

凛は、嬉しかった。

「恋みたいなの?」

「えぇ?」

また、凛は驚いた。

「だって、先生がそう言ってた!」

指さされた先生が、遠くで笑っていた。

「そんな恋ばかりでないよ。」

小さな声で、優奈に囁いた。

「静かな恋もあるの。ゆうも、大人になったら、きっと、わかるから。」

そう。優奈も大人になる。きっと、恋もするだろう。その時、自分は翔とう人の事を話せる時がくるのだろうか・・。

「ママ。寒いね。帰ろう。」

優奈は、母親の手をとった。まだまだ、春とはいえ、夜は冷える。母親の手は、すっかり、冷たくなっていた。

「ママに話したい事がるんだ。」

優奈は、嬉しそうだった。

「今日ね。皆で行ったお散歩でね。」

先生からの、申し送りがあるというのに、優奈は、一生懸命に話しかけていた。凛は、聞く余裕もない。

「聞いてあげてください。」

担任の先生が笑った。

「優奈ちゃん。近くにベーカリーができるので、張り紙をみて、大興奮だったんです。」

からかうので、優奈は、少し、怒った。

「だって、大好きなパンが、二つも、くっついてるんだもん!」

「なあに?」

凛は、聞いてみた。

「あのね。メロンパンの中に、プリンが入ってるの!」

「えぇ!甘そう・・・。」

想像したら、甘すぎると思った。

「写真だけなんですけどね。クッキー生地にのったプリンみたいですよ。」

先生が補足した。

「オープンしたら、行こうね。」

優奈は、バッグを背負った。

「約束。」

メロンパンとプリン。凛は、少しだけ、胸が、苦しくなった。忘れられない人の影があった。

「そうね。行こうね。」

桜ももう少しで散る。この幻想的な夜。桜も、夢を見るのだろうか・・・。その夢は、色と同じく淡い色なのだろうか。凛は、優奈を後部席に座らせた。遠くで、花火が上がっている。いつか、翔と見にいく約束をしていた花火。その約束も果たせなかった。車は、走り出した。優奈を思い、母親に戻った。かけがいのない存在を守る為に。

「ママ!歌を歌おうか?」

優奈が、声を張り上げた。

「天使の声ね。」

凛は、笑った。

「そうだよ。ママ。よく、聞いてね。」

優奈は、歌い続けた。優奈は、凛にとって天使だ。優奈の為に、翔と別れた。これで、良かったんだ。凛は、瞼が熱くなっていた。

「でもね・・。ママ。」

聞えたかのように、優奈は言った。

「優奈が、また、逢わせてあげるよ。」

「誰に?」

「へへへ・・。」

この小さな天使が、凛の夢を叶える日も近い。桜が綺麗な夜だった。


了。





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