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夜桜みる夢。恋花火。  作者: 楡崎夏芽
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蓮という人。

佐久間 蓮。隣の部に配属になった男。他の男達とは、少し、雰囲気の違う。兎角、良くない、噂の耐えない男。上司に暴力をふったとかで、左遷されてきた。翔とは、全く正反対の域の男。

「あなたさ・・。」

蓮は、屋上から、コーヒールームに杏奈を連れてきていた。

「思い詰めやすいよ。」

杏奈の前のテーブルに缶コーヒーを置いた。

「前から、見てたけど。」

濃い目のコーヒーをすすった。

「あいつの事、すきなんでしょ。」

杏奈は、顔が赤くなった。

「だったら、諦めた方がいいよ。」

「何の事ですか?」

今日、初めて言葉を交わした男に言われたくない。

「あなたに、関係ないでしょ。」

杏奈は、席を立った。

「いいんです。分り易くても・・・。これが、あたしなんです。変える事なんて出来ない。」

変える事ができたら、苦しむ事なんてない。自分を変える事ができない。だから、苦しい恋の真ただ中にいる。

「もう、ほっといてください!」

手で、缶コーヒーを、押し返すと、きびすを返し、出て行った。

「ほっときたいんだけどね・・。」

蓮は、コーヒーを飲み干していた。


別れを決めたなら、どんな事情があろうと連絡をとってはならない。期待を持たせては、いけない。二人は、終ったのだから。でも、どちらかに、迷いがあったなら、この微妙なバランスは崩れ、また、迷走を始める。先の見えない逢瀬に、再び傷つく。互いに、求め合い、傷つけあい、最後は、憎む事で諦める。

翔は、凛と、一緒にいる事を選んだ。という事は、杏奈とは、はなれなくてはいけない。凛は、人のものである。リスクの高い恋を翔は、選んだ。杏奈とは、一緒に居られないそう思う一方で、兄のように、杏奈の安否を心配するのだった。携帯に連絡がつかない事で、翔は、杏奈に期待を持たせてしまう事になる。

「杏奈。」

かつて、そうだったように、翔は杏奈の家の前にいた。馴れたように、車を路地に止め、祖母と一緒に住んでいる家に入っていった。祖母は、いない。廊下の突き当たり右側が、杏奈の部屋。

「杏奈。」

まだ、杏奈の家の鍵を持っていた。杏奈とは、一緒に居られない。そう答えをだしていたのに、車のキーと一緒に、付いたままになっていた。

「何か、あったのか?」

ドアの前から、声をかけた。気配はあるが、返事はない。

「杏奈。あけるよ。」

翔は、ドアを開けた。視界に広がる甘ったるい色調。こんな部屋の雰囲気が、翔は嫌いだった。杏奈の甘えた顔が、思い出される。一度は、翔のセンスで模様替えしたが、すっかり、翔が遠のいた最近は、また、杏奈の好む色調に変っていた。

「翔・・。」

杏奈は、居た。甘ったるい色調に埋もれて。ベッドの上で、小さく丸くなって、杏奈は居た。

「居たのか・・。」

翔は、杏奈の顔を見て少し、ほっとしたようだっった。

「あんな連絡よこして・・。何があったんだ?」

杏奈は、泣いていた。

「翔・・。」

子供のように、一人、泣きじゃくっていた。

「あたし・・。」

見下ろす杏奈は、傷だらけになっていた。

「何があったんだ?」

擦り傷だらけの杏奈を翔は、驚いて見下ろすだけだった。

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