君は、何処へ・・・。
「じゃあ・・。とり合えず。」
翔は、優奈を、そっと、抱き寄せた。
「お兄ちゃん。少し、出てくる。」
「どこかに、行くの?」
優奈は、見上げた。
「仕事行かないとね。大人は、大変なんだよ。」
「優に、何か、買ってくれるの?」
「何が欲しい?」
「メロンパン!」
凛が、振向きながら、声をあげた。
「そして、プリン」
優奈が、続いた。
「わかったよ。」
翔は、笑った。
「仕事帰りに、買って、また、くるよ。」
そして、凛に、向かっていった。
「仕事。出て来れそう?」
「ん・・。明日には、出れると思う。」
翔のおかげで、かなり、気分が、落ち着いたのは、事実だ。
「あたしからも、会社に、電話は、入れておく。」
翔が、居てくれる。それだけで、気持ちが、救われるのだった。
「行くから。」
心配そうな翔に、凛は、微笑んだ。
「また、来る。メロンパンとプリン買ってね。」
凛の笑顔をみると、いくらかは、安心できた。いつか、一緒に居て、凛の笑顔を、見続けたい。
「本当に?優にも、買ってね!」
優奈が、ピョンピョンしながら、言い続けた。
「約束。」
翔は、手を上げ、玄関を出て行った。
「仕事言ったら、戻るから。」
そう、思っていた。とり合えず、車に乗る前に、いつものように、携帯のチェックをする事にした。凛の前では、携帯の、メールチェックする事もなく、時間が、過ぎていた。いつも、メールの相手が、目の前にいては、そんな必要が、なかたったからだが・・。メールは、特に誰からも、来てなかった。ショップから、何件か、あっただけで、特に、関心なかったが、着信履歴が、いくつも、あった。
「杏奈・・。」
画面を、みつめて、息を呑んだ。それは、何件も、きていた。絶え間なく・・。そして、一番、近い時間には、メッセージが、残されていた。
「これは・・。」
聞いたら、いいものなのか、翔は、悩んだ。が、聞いてみる事にした。
「翔・・。」
杏奈の声が、入っていた。
「あたし・・。もう・・。」
その後、風を巻き込む音が、続いていた。そして、金属音が、響き渡り、何も、聞えなくなった。
「杏奈?」
翔は、嫌な予感に、襲われていた。すぐ、携帯をかけてみた。が、何回、かけても、杏奈が、出ることはなかった。
「待てよ・・。」
杏奈は、思いつめるタイプだ。何をしでかしても、不思議はない。杏奈は、今、何処にいるのか・・。
翔は、車を、ゆっくりと出していた。かつては、何度も、通っていた杏奈の、自宅へと、向けて・・。