杏奈の、予言・・・。
「だからさ・・・。」
翔は、イラついていた。
「何回も、話し合っただろう。」
車の助手席で、同じフロアーで、働く杏奈が、うな垂れていた。
「杏奈、君の言う事は、わかるよ・・・。だけど・・・。俺はさ。」
ため息をついた。
「結婚は、まだ、早すぎると思うんだ。」
「・・だけど。」
杏奈は、翔に食いついた。
「先生も、早く、子供を作ったほうが良いって・・・。」
「だから・・・。」
結婚したい。杏奈は、翔に、言った。まだ、20歳を、過ぎたばかりだが、婦人科系の病気を患い、治療の為にも、早く、結婚を、勧められていた。当然、付き合っている彼である翔に、相談したが、まだ、結婚には、早すぎるという答えだった。翔は、26歳を、迎えたばかりだったが、会社を、経営する息子にありがちな、まだ、生活力のない、若すぎる青年だった。
「別れようか・・。」
翔は、切り出した。半年前にも、翔から、別れを切り出していた。理由は、杏奈の男性関係だった。三角関係に、疲れ、別れを切り出した翔だったが、杏奈が、男と手を切る形で、有耶無耶になっていた。その後、ずるずると、杏奈とは、付き合っていたが、翔にとって、杏奈は、重たい女であった。とにかく、彼の行動を、チェックしたがる。メールをして、すぐ、返信しないと、電話が、かかってくる始末だ。いつ、別れを、切り出そうか。翔は、思っていた。今日も、移動してきた凛との事で、険悪な雰囲気になっていた。
「別れるって?」
杏奈は、顔色がかわった。
「いや!翔と一緒にいたい」
「だって・・・。無理だよ。結婚は、できない」
「すぐ、結婚しなくてもいいの。でも、考えていて、ほしいの」
「考えてない事は、ないけど・・・。」
翔は、考えた。本当の事を、言うべきか・・。
「杏奈はさ・・・。」
病気の事もある。でも、もっと。気になる理由がある。
「重過ぎるよ」
「・・・・。」
杏奈が、すぐ、不安定になりには、理由があった。杏奈は、祖母と、暮らしている。一緒に、妹も、くらしているが、父親が、違う。杏奈の、母親は、極度の鬱病で、精神科に、長期入院しているのだ。父親は、杏奈の母親が、外で作った男性の子供・・・。つまり、杏奈の妹だが、引き取って育てていた。が、杏奈の母親と、離婚し、新しい家族を、迎える際、杏奈と妹を、元妻の、実家に、引き取らせていた。ゆえに、杏奈は、翔に、執着していた。早く、家族が、ほしい。翔に一目ぼれした杏奈は、他に彼女が、いた彼を、奪い取り、付き合うになった。ここ1年の、話だ。
「自由になりたいんだ。」
翔は、杏奈に言った。普通に、前の彼女とそうだったように、普通の付き合いがしたい。
「翔のいうとおりにする」
「杏奈」
「時間を頂戴・・・。少しだけ。だから、別れるなんて、言わないで!」
「だめだよ。」
「どうして?あの人が、来たから?」
「あの人って?」
心あたりがない。
「パートの・・・。あの、細い人。」
「あぁ・・・。バカだな。彼女は、家庭があるんだから。だいたい、今日、逢ったばかりだよ」
「そうかな・・・。」
こういう時、女は、敏感だ。自分の男が、どういうタイプに魅かれるか・・・。直感でわかる。
「翔は、あの人に魅かれると思う。あの人もね。」
「まさか・・・。」
翔は、笑った。まさか・・・。杏奈のいう通りになるとは、この時、翔は、思わなかった。




