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夜桜みる夢。恋花火。  作者: 楡崎夏芽
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諦めた人。

杏奈は、ずーっと、時計を気にしていた。あの日、翔が、迎えに来てくれた日、嬉しかった。翔が、自分の事を、まだ、気にかけてくれていたのが、嬉しかった。

「まだ、逢える?」

翔に、おそるおそる尋ねてみた。

「付き合うって事?」

運転しながら、ぽそっと、言った。

「付き合わなくていい・・。結婚したいなんて、もう、言わない。」

「杏奈の、気持ちが、変ったって事?」

翔は、表情を変えなかった。

「翔が、嫌なら、結婚しなくてもいい・・。傍にいたいの。」

「俺さ・・。」

翔は、話すかどうか、悩んでいるようだった。

「諦めたい人がいる。」

「あたしじゃない人が、いたって事?」

「今、決めてきたんだ。」

杏奈は、黙った。自分が、待っている間、翔は、別の女性と逢っていたのだ。別れたようだが、胸を、鷲掴みされたかのように、苦しかった。

「その人とは、一緒になれない・・・。」

「それを、あたしに言うのは、どうして?」

車は、高速のトンネルに入っていった。オレンジ色のライトに、翔の、横顔が、うつしだされていた。開いた瞳は、杏奈が、始めてみる哀しい色を、秘めていた。

「他に、好きな人が、いたって、知っておいて欲しい。」

「それでも、あたしは、翔と居たいの。」

「今の、俺は、あの人の、痕跡が、強くて・・。」

今、自分が、何を言ってるのか、わからなくなる程、翔は、混乱していた。わかっているのは、凛とは、判れなくてはいけないと、いう事。杏奈と、一緒にいても、気持ちは、凛のところにあると、いう事を言いたいのだが、凛への、思いを、杏奈に、世間に、悟られては、いけない。

「翔・・。」

長い下りの、トンネルを抜け、翔の、表情は、暗闇に包まれた。運転する翔の、左腕に、そっと、触れてみた。

「あたし、待ってる。いつまでも・・。待ってるから。」

翔は、何も、応えなかった。あの日から、時間が、流れていった。メールは、付き合っていた頃より、頻繁では、なかったが、他愛ない内容の、メールへの、返事だけは、来ていた。

・・・諦めた人・・・

それが、誰かは、わかる。諦めたというのであれば、相手が、どうのという問題では、なかった。翔の気持ちの中だけの、問題なのだから。だが、杏奈は、不安を掻き立てられていた。凛が、無断で会社を、休んでから、翔の様子が、おかしいのである。明らかに、凛を、気にかけている。早退してまで、凛の所に行ったのかも、しれない。時計を、気にしながら、杏奈は、仕事に、身が入らなかった。

・・・どうしよう・・・翔は、今頃、凛と逢ってる?・・・・

いらない想像に、身を切られるようだった。

・・・翔に逢って、確かめたい・・・

杏奈は、翔の、携帯に、かけようか、悩むのだった。

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