重なる時間。
きっと、そこに超えてはいけない線があったから、2人共、ひきあったのかもしれない。ごく、自然に、触れあい、感情のままに、求め合う。これから、どうしようとか、相手の背景に何があるとか、魅かれあう2人に、そんな事は、関係なかった。大人の2人が、魅かれあったら、ごく自然にそうなるであろうと、いう事だけであった。
「ずーっと、こうなりたかったと思う」
翔が、天井を見上げたまま、呟いた。
「あたしも・・。」
否定できない。逢わない方がいいとか、言ったのは、理想論。翔の、心臓は、思ったより早く鼓動を打っていた。このまま、倒れてしまうんじゃないかと、思うほど、早く、動いている。
「心臓の動きが、早い」
「それは、そうだよ・・。」
翔は、笑った。
「思ったより、足が、短い」
「五月蝿い!」
翔の脚をなぞる凛の、右手を、叩いて払った。
「凛が、長すぎるんだよ。」
「そうかな。普通だと思うけど」
たわいない会話が、今は、愛おしく感じる。このまま、一緒にいる時間が、少しでも、欲しいと2人が、思っていた時、小さな邪魔者が現れた。
「ママ!」
むくっと、優奈が、起き上がった。
「何処?」
「ここ・・。」
凛が、あわてて、傍にあったタオルを、ひぱったので、翔と、取り合いになった。
「ちょっと、翔。離してよ!」
「俺だって、無理ですから・・。」
「だって」
「ママ!」
優奈は、凛の、姿をみつけると、2人の間に、入り込んできた。
「暑いね・・。優も、裸になる!」
「違うよ・・・。これから、お風呂なの」
「お風呂?」
「そう。昨日、そのまま、寝ちゃったものね・・。優。一緒に行こうか?」
「うん。」
凛は、無理矢理、翔から、タオルを、奪い取ると、優奈をつれて、立ち上がった。
「優。お風呂。行こうね!」
「うん」
凛は、タオルで、体を、包むと、優奈を促し、シャワーへと、向かった。後には、哀れな姿の、翔のみが、残った。
「今のうち、着替えてて・・。」
イタズラな顔の凛が、笑っていた。