この恋、あきらめよう。
ずーっと、すれ違う車のヘッドライトに、杏奈の寝顔が、浮かび上がる。杏奈は、1度は、好きになった人。多分、今も、好きなんだと思う。自分を思う一途さも、好きだったし、自分を頼りにしてくれるのも、嬉しかった。何より、一緒にいると、楽しかった。でも、それは、恋人として、いる上でのこと。実際、杏奈に、「結婚」という2文字を告げられた時、悩んでしまった。生涯の伴侶として、考えた時、答えは、違かった。自分が、心から、ずーっと、一緒に居たいと思う人・・・。それは、杏奈ではなかった。
「だからといって」
凛。の顔が浮かぶ。よく、出会うのが、遅かっただけという理由を聞くが、出逢うのが、早かったとしても、凛は、遥か7歳も、年上である。上手く、いく訳もなく、会社を経営している親が、認める訳もなく、伴侶としては、考えては、いけなかった。凛が、仮に1人だとしても、障害がありすぎる。
高速の街灯がオレンジ色に反射していた。遠くからの、ヘッドライトと、流れる光に、杏奈の顔は、穏やかに映し出される。
・・・自分は、杏奈に愛されてる・・・
人に、思われる幸せ。自分も、大切には、思ってる。愛される幸せを、とるか?それとも、愛する事をとるか。杏奈をとるか・・・。修羅の道を通る凛をのこれからをとるか・・・。凛を、とるには、あまりにも、障害が多すぎる。社会的にも、自分は、多くの物を失うだろう・・・。何よりも、凛の子供を傷つける。今なら、引き返せる。ほんの、少しのイタズラにすぎなかったと、笑って言える。深入りする前に・・・。この思いが深くなる前に・・・。
「そうだよ・・。」
杏奈は、重い。だけど、凛との恋は、彼女を社会的にも、傷つける。冷静にならなくてはいけない。本当に、彼女を思うのであれば、この思いは、封印するべきであろう。
・・・一番、大切な人・・・
嘘じゃない。
・・・・できるなら、一緒になりたい・・・
嘘じゃない。相手の幸せを遠くから願う恋があっても、いいはずだ。
「よそう」
凛に、連絡をとるのは、もう止めよう。自分は、男だから、傷は浅くてすむ。そして・・・。杏奈とも、別れる。
「それが、いい」
凛とは、ほんの、一瞬の恋だったとあきらめよう。
翔の車は、高速を降りていった。