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夜桜みる夢。恋花火。  作者: 楡崎夏芽
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不正な事実・・・。

「本当なの?」

再度、実家の母に、優奈を預け、コンビニの駐車場に向かった凛が、見たのは、紅い外車の前に立つ明日香の姿だった。

「ここよ」

きっぱりと、明日香は言った。

車のダッシュボードには、可愛らしいヌイグルミが飾ってある。若い女性なんだろうか。今朝、すれ違った時は、顔を良く見なかったが、車の内装が若い女性である事を、示していた。

「そう・・。」

なんとも、気のない返事をしてしまった自分に凛は、鳥肌がたった。今、夫への、自分の気持ちは、何処にも見当たらなかった。

「もし・・・。そうだとしたら、どうするの?」

「どうするって?」

「彼が、他の女の人と一緒だったとして、私にどうしろと?」

凛の思いがけない質問に、明日香は、驚いた。

「平気なの?」

「平気な訳ない。ただ・・・。そおっと、しておこうかと思ってたの。追求する事が、解決にならないと、思って。このまま、静かに、暮らせれればいいと思ってたの。」

悦史の行動が、怪しいと思った事は、今まで何度もあった。だが、追求するエネルギーも、彼への、執着もなかったし、何より、争わず、静かに暮らしたかった。

「だとしたら・・・。ごめんなさい。余計な事だったわね」

明日香は、その車から、離れようとした。

「あたしは、このまま、気持ちも離れてしまった悦史さんと、一緒に居ても、あなたらしくないんじゃないかと思って。」

「心配してくれて、ありがとう」

悦史ばかりを、責める事は、出来ない。今、自分は、現実から、逃避して、年下の人に気持ちが、揺らぎ始めていたのだ。

「あたしは、大丈夫」

嘘ばかり・・・。心もとなく、翔に支えて欲しいと思っていたくせに。本当は、少しでも、翔の傍にいたい癖に。いつも、自分の一番大切な気持ちに、嘘をつく。

「凛が、平気なら、いいよ。ごめん。このまま、帰ろうか・・・。」

「そう・・ね」

ここで、追求するのが、怖い。凛は、明日香を促し、自分の車に乗ろうとしたとき、携帯がなった。

「はい」

実家からだった。

「本当なの?」

驚いて、明日香をかえりみた。

「どうしたの?」

それは、明日香に、すがりつくような目だった。

「優奈が・・・。母が、目をはなした隙に、怪我をしたって。」

「で・・。今は?」

「病院にいくからって」

慌てて、車のキーが出てこない。いつも、バッグから、キーを出すのに、手間どる。

「あたしも、行くから!」

明日香は、もたつく、凛のバッグを、とりあげ、キーを探し出した。

「もう、何をあせってるの。」

「明日香は、子供達が・・・。」

「大丈夫。ママ友に、頼むから。それより、あたしが、運転するから、凛。乗って。」

明日香は、手際よく、凛の車の運転席に滑り込んだ。

「怪我は、どのくらいなの?」

話しかけても、凛は、応えられなかった。自分が、あんな事をしたから、罰が、くだったんだ・・・。等、いろんな思いにかられていた。

「凛?」

顔色が、悪かった。

「凛。しっかりしてよ。」

明日香の、運転する車が、通りへと、滑り出していった。

「それこそ・・・。連絡するべきよ。」

「誰に?」

一瞬。翔の顔が浮かんだ。

「誰にって・・。」

明日香は、笑った。

「他に誰にするの?悦史さんにでしょ」

街灯が、新緑の街路樹を、オレンジに染めていた。昼間みる景色とは、全く、違う。明日香の、運転する車は、大通りを離れ、アパートの立ち並ぶ路地に入っていった。

「ちょっと、待って。」

見慣れたクルマが、狭い駐車場に、横付けされたいた。

「ここで、携帯にかけるの。」

明日香が、言った。

「優奈ちゃんが、怪我をしたって、いってごらん」

顔をあげると、そこのは、夫の車が、とまっていた。明るいベージュの、建物には、ワインレッドの文字で、アパート名が、書かれていた。

「明日香・・・。知ってたの?」

「見かけたのは、今日だけじゃないもの。」

言われるまま、凛は、携帯を取り出した。

「でも、今の事は、偶然よ・・。優奈ちゃんの事が、なかったら、こんな裏道とおらなかった。」

横目で、明日香の真剣な顔をみつめながら、凛は、夫。悦史の携帯に、かけていた。

「悦史・・・?」

ようやく、悦史が、携帯に、でたようだった。

「優奈が、怪我をしたの。これから、病院に行ってくるから・・。」

凛は、小さく何事か、悦史と会話すると、携帯を切った。

「それで・・・。どうするの?」

隠れるように、車を停車させる明日香に、凛は言った。

「少しだけ、待つの・・。」

「でも、優奈が。」

「それは、悦史さんも、同じだと、思うわよ。」

明日香の言うとおり、アパートの2階はじに、ライトがつき、2人の、人影が、動いてくるのが、みえた。1つは、背が高く、もう1つは、小柄だった。滑るように、階段をおり、階下の駐車場に、姿を見せた。

「そうね・・・。」

強張った表情で、凛は、その人影を、みつめていた。

「判った事で、前へ進めるかもしれないわね。」

凛が、二人の姿を確認するのを、見ると、明日香は、車を出していった。







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