思いつめるは、杏奈心。
携帯がつながらない。何処で、どうしているか、知りたい。あの別れ話のでた日から、翔の態度は、変っていった。別れると、決めた訳でもないのに、いくらメールをしても、返信は、こなかった。
「お願いだから、忙しくなかったら、返信して」
願いこんで、ようやく3回に1回短い返信が届くだけだった。
・・・もう、終ってるんだ・・・・
判っていたが、理解したくなかった。翔を離したくない。どんな手をつかっても、傍にいたい。もう、プライドも何も、なかった。
「翔。どこに、いるの?」
携帯をかけてみたが、つながらなかった。自分の携帯からは、かけられないのか、別の携帯で、かけて見たりした。ようやく、つながった。
「誰?」
「ごめん」
杏奈の声を聞いて、翔は、黙り込んだ。
「お願いだから、無視しないで」
「こうしないと、ダメだろう。別れるって、決めた」
「でも。翔がいないと、ダメなの」
「大丈夫だよ。杏奈は、寂しいだけなんだ。俺と一緒にいたからって、それは、変らない。」
「変る。翔じゃなきゃ、ダメ」
「・・・・」
一度は、翔も、本気になった女性である、本来の、優柔不断な性格が、揺らいでいた。冷たくすれば、別れられると、思っていたが、冷酷に徹する事が、できなかった。
「だったら、せめて、支えて。翔の重荷にならないように、する。病気が、落ち着くまで、体が、安定する迄でいいの」
嫌って別れるわけでは、ない。自分は、合わないと、思って、別れるのを決めたのだ。だから、そう言われると・・・。
「杏奈。少しだけだよ。ほんっとに。」
この間も、そう言ったじゃないか・・・。翔は、冷たさを通せない自分に、失望した。
「メールくらいなら・・・。」
そう、言って、杏奈とのメールを受ける事にした。それからは、今まで、何もなかったかのように、メールのやりとりが続いたが、最近、途切れがちになっていた。そして、去年は、一緒に行ったはずの、コンサートも、お誘いのメールは、なかった。
「行かない筈は、ないもの・・・。」
杏奈は、だいたい翔が、どの時間からの、コンサートで、場所は、何処か、察視が、ついた。彼がいかない訳がない。時計を、気にしながら、お気に入りのチュニックに、レースのベストを重ねた、バックを、入れ替え、中に、携帯と財布を、放り込んだ。何か、自分の、心の中で叫んでいた。
「早くしないと・・・。」
あせるように、電車の、時間を確認すると、玄関にいた。
「あたし・・・。いったい、どうしようとしてるんだろう・・。」
翔を、待ち伏せするつもりなの?もし、翔が、ほかの女性と、一緒にいたら・・・。
「そんな事は、ない」
頭をふった。きっと、友達と、一緒なんだ・・・。あたしを、誘おうとしたけど、最近、冷たかったから、誘えなくて・・・。きっと、そうに違いない。杏奈は、靴を、フラットなものに、しようかと、おもったが、以前、翔が好きと言ってくれた、ヒールの高いミュールを履いた。
「翔に逢いたい。」
自分の気持ちのまま、家を後にした。