05 ソウタの魔力量
僕たちは、町から近いアンデスの森に来ていた。
まだ不慣れな僕の為に、初心者用の依頼を受けたのだ。
フェミニアは冒険者になってから1年位の先輩で16歳。
僕より一つ年上だった。
因みにDランクだそうだ。
僕は初心者なのでEランク。
フェミニアは、童顔で背も低いし小学生と言われても違和感ないんだけどな。
本人に言ったら傷つきそうだけど。
「いつもここら辺に居るんだけど…」
茂みからカサカサと音が聞こえた。
ぷるんとした透明な物体。
スライムだ。
「意外と素早いのよ。剣を使う?それとも魔法で?」
包丁すらあまり握った事無いのに、剣なんて扱えるのだろうか?
「じゃあ、魔法で」
「あら?杖は持っていないのね。私の杖使う?」
魔法使いと言えば魔法の杖。
買っていないのでもちろん持っていない。
「無くても多分…平気だと思う」
僕はスライムに向けて手をかざし火をイメージする。
「『ファイヤーボール』」
言葉を発すると、火の塊がスライムに向かって飛んで行った。
「「キュピイィィ」」
スライムは悲鳴を上げながら動かなくなった。
黒焦げになった死骸が横たわっている。
「あら、一発で終わりね。ファイヤーボールにしては、少し火力が強いみたいだけど…」
スライムの魔石を、フェミニアさんが短剣で取り出していた。
モンスターの魔石は、依頼完了の証になり売るとお金になるらしい。
「「ちょっと!ソウタ、ステータスの魔力残量20しか無いじゃない!魔法使って大丈夫なの?クラクラしない?」」
急にフェミニアさんが叫んだので驚いた。
『ソウタは、大気から魔力を取り出しているから大丈夫よ。ステータスは参考にならないわ』
「大気って何?」
フェミニアさんは首を傾げていた。
言っている意味が解らなかったらしい。
『マナのほうが解るかしら。それを利用しているって訳。魔力で言えば無限ね』
「よく分からないけど、ソウタは特別なの?」
僕の魔力量が無限?
「それが本当なら凄いわね!王城の魔導士だって、魔力総量多いって聞くけどそれ以上って事よね…ソウタ、これ絶対内緒にしときなさいよ。大騒ぎになっちゃう。それこそ王城から呼び出しが来ちゃうかもしれないわよ」
*
ソウタはぐっすりと眠っていた。
森を歩くのに慣れていないようなので疲れたのだろう。
寝顔を見てふと思う。
彼の柔らかい髪を撫でる。
『そろそろ天界に帰らないといけないのだけど…』
わたしは呟いた。
わたしは小さいなりをしているが一応女神だ。
最初は同情だったと思う。
まだ少年なのに、元の世界で何がそんなに辛かったのだろうか?
最初は軽い疑問だった。
そのうちソウタの事が知りたくなってきて…。
しばらく一緒に居たけど流石に帰らないといけない。
『でも…帰りたくない』
ソウタと居ると楽しくて仕方ないのだ。
退屈だった毎日が、鮮やかな色彩に変わっていく。
ソウタはフェミニアが面倒を見ているのでもうわたしの出る幕はない。
楽しそうに二人で喋っているのを見ていた。
わたしは急に虚しさを覚え始めていた。
ソウタが幸せならそれで良いはずなのに…。
この気持ちは一体何?
心のもやもやが晴れないまま夜は更けていった。
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