40 教会
『『君たち結婚するんだって?』』
僕はアルトと話をしていた。
「ぶっ!」
思わず飲んでいた紅茶を吹き出してしまった。
あれ?誰にも言っていないはずなのだけど。
メイドさんが慌てて、拭くものを持ってきてくれた。
余分な仕事を増やして申し訳ない。
『『フェミニアから聞いたよ。ぼくたちよりも先に結婚することになりそうだね?』』
アルトはゼノベアの王様で、フェミニアはトステアの王女様だ。
結婚式も大規模になり、準備も大変だろう。
なのでまだ先の予定だったりするのだ。
確か一年後くらいだったっけ?
「あーコルネットが話したのか…」
彼女がフェミニアに色々話していてもおかしくは無いしな。
女性同士話しやすいのだろう。
「まあ、町の小さい教会で二人きりでするつもりだよ」
『『えーなんで呼んでくれないんだ?』』
「貴方を呼んだら大騒ぎになるでしょうが」
王様が現れたら、町中が大騒ぎになる事は容易に想像できる。
そんな大事にしたくないのだ。
*
「ナダル。金、全然足りえねな。どこかの店に押し入ったらどうだ?」
ガシャーン。
俺は、ダグラスに足で蹴られて壁にぶつかった。
部屋の中の物が上から落ちてきて、頭にぶつかる。
「痛たた…それは流石にできないよ。お金は何とかするから待ってくれ」
軽い気持ちでダグラスに借金をしてしまい、利子がいつの間にか増えていき返済が滞ってしまっていた。
「お前の彼女可愛いよな…ミーシャって言ったっけ?《《明日も》》無事に会えると良いな?」
ゾクッ!
ダグラスはミーシャに手を出すつもりなのか。
「ミーシャには手を出さないでくれ」
「最近、金持ちの若造がこの町に来たらしい。そいつの女を人質に取って身代金要求しろ」
「わかったよ…」
本当はこんな事したくない。
だけど彼女を盾に脅されてしまい逆らえなかった。
*
『くしゅん!』
コルネットが、珍しくクシャミをした。
「あれ?コルネット風邪?めずらしいね」
『何だか嫌な予感がする…悪寒?』
僕たちは久しぶりに町を歩いていた。
結婚式をする教会を下見に来ていたのだ。
「こじんまりとしているね…コルネットここでも良い?」
『場所はどこでもいいわ。別にこだわりがある訳じゃないから』
女子は結婚に憧れるというけれど、結婚式もそのうちの一つだろう。
コルネットは女神だから人間の女性とは違うのだろう。
「「もっと豪華じゃなきゃ嫌」とか言われなくて良かった。中に入ってみようか」
僕たちは、扉を開けて小さい教会に足を踏み入れた。
中は薄暗く前方に明かりが灯されている。
祭壇には女神の像が祭られているようだった。
『ここもアイリーンの像なんだ。ふうん…』
コルネットは目を細めていた。
「お祈りですか?」
神父さんが近づいてきて僕たちに声をかけてきた。
『今の女神はわたしだって言ってやろうかしら…』
あれ?コルネットが不機嫌になってる。
前回も見たアイリーンの女神像が気に入らないみたいだ。




