31 屋敷に引っ越し1
空の旅は快適だった。
特に外敵が居るわけでも無かった為だ。
流石に空には野盗は居ないだろう。
ドラゴンとかが現れたら別なのだろうけど。
高所恐怖症だけど魔法のお陰で怖くなくなったし、体が震えてきた時はコルネットが居たから何とかやり過ごした。
ワイバーンで移動するのは、まだ試験段階だったとか。
僕たちだったから大丈夫だろうと乗せてもらったようだ。
危険になっても自分たちでどうにか出来るだろうと。
お陰で随分早く着いたのだけど。
数時間おきに休憩を挟みながらの移動で、まる一日かかった。
「ここが僕の家?大きくない?」
上から見下ろしてもかなり大きい。
豪邸という名にふさわしく、体育館くらいの大きさはあるだろうか。
緑の中にぽつんとその屋敷はあった。
敷地内にワイバーンは着陸する。
庭に降りても十分な広さだ。
「「「お待ちしておりました。ソウタ様、コルネット様」」」
人が大勢いて横に並んでいる。
前の列に白髪の男性の執事。
後ろの列には女性のメイドが10名だろうか。
僕たちの到着を待っていたようだった。
「送って頂いてありがとうございました」
僕は御者にお礼を言って降り立った。
すぐさま御者は王城へ戻るみたいだ。
ワイバーンはゆっくりと上空に舞い上がっていった。
後でアルトに僕が高い所が苦手な事を言っておかないとな。
もう二度と同じ事は無いだろうけど。
「わぁ~」
『わぁ~』
扉を開け玄関ロビーに入ると、二人同時に歓声が上がる。
豪華で広い室内。
上にはシャンデリア、床はフカフカの絨毯。
そこかしこに高そうな絵画が飾ってある。
「古い屋敷だとしても…これはヤバイ。アルトって凄い貴族だったんだろうなって思う」
『あら?アルトさん自分の事言ってましたっけ?元貴族だって』
「昔住んでいた家って言うから、元々王族じゃなかったのかな?って思ったんだけど」
『ソウタは時々鋭いよね…確か王女様と結婚されたのがアルトさんの父親で、前王様に推薦されたと聞いているわ』
「まあ、親族には違いないか」
僕には関係のない話ではある。
もしかしたらフェミニアと結婚すれば、そういった未来もあったかもしれないけど。
「無事に着いたことをアルトに報告しないと…それと空の旅の事も…」
僕はロビーに置いてあるソファーに適当に座った。
通信用の魔道具を起動させる。
指で触って、起動するための言葉を発すると動くようになる。
「アルト」
ペンダントがチカチカ光って起動した。
こっちのパスワードが「アルト」だと、あっちのパスワードは「ソウタ」なのだろうか?
微妙に複雑な心境になった。
『『…少し待ってくれ。こちらから連絡する』』
どうやら王城は立て込んでいるようだった。




