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19 プエルガの領主

目の前に大海原が見えていた。

潮風が心地よい。


「これが海なのね」

「あれ?フェミニアは初めて?」

「だって、遠出をした事無かったから…」


空にカモメが飛んでいる。

異世界も風景はあまり変わらないようだった。


「これから領主様の所へ向かうのじゃが、くれぐれも対応には気を付けてほしい」

「領主?今回の納品先ですか?」


収納魔法アイテムボックスの中身じゃよ。今まで一番高価でめったに出回らないものでな」


どうやらとんでもなく高い物らしい。

流石貴族と言ったところか。


「領主…ベールズ男爵かしら?」

「おや?ご存じで?」

「えっと、フェミニアは実はトステアの第六王女だったりするんですよ…内緒でお願いします」


「「えええっ?」」


「そ、そうでしたか…そういえば、放浪している王女様がいるとか…噂で聞いたことがありますね…」


放浪か…あながち間違ってもいないのか?




   *




領主様の邸宅に着いた。

大きいお屋敷の前に荷馬車を停める。


「おお、待ちわびておったぞ!」


赤い髪の豪華そうな衣服をまとった男性。

この人が男爵様なのだろう。


「わざわざお出迎えありがとうございます」

「挨拶はいいから早く中へ…」


随分とせっかちな人のようだ。

応接間に通される。

王城も豪華だったが、この屋敷も中々のようだ。

フカフカのじゅうたんに柔らかいソファ。


「ソウタさん、収納魔法アイテムボックスの中身をお願いします」

「あ、はい」


僕は収納魔法アイテムボックスから宝箱を取り出した。


「どうぞ」


慎重に宝箱を渡すと、ロペスさんがカギを開けた。

中に入っていたのは一体の像。


「これは女神像で、女神様が持っているのは魔石。癒しの力があるとされています」


ロペスはテーブルの上に置いた。

女神像は祈るように手が組まれていて立っている。

白い石が手の所に取り付けられていた。


何でも魔法の力を持つ石があるらしい。

火の魔法や水の魔法、癒しの力がある魔法など。

それらの石は高価すぎて市場に出回らないとか。

モンスターからごく稀に出現するらしい石なので貴重なのだ。


「確かに石だけでも貴重なのに、女神様が持ってるから値段が跳ね上がるって訳ね」

『女神様って名前は?』

「アイリーン様じゃ」


『あー前任のアイリーンね』

コルネットが知っている人のようだった。


「あの…ロペス殿、こちらの方々は?」


「この少年は冒険者のソウタさん、少女はフェミニアさん、妖精のコルネットさんです」


「男爵お久しぶりです。トステア第六のフェミニアですわ」

「お、王女?ですか?」


男爵の声が裏返っている。


「お知り合いだったのですか?」


ベールズ男爵は、余裕の表情が一変し慌てていた。


「い、一番高い紅茶をお持ちしろ!それとケーキもだ」


『ケーキ?』


コルネットの目が輝いた。

この世界にもケーキってあるんだな。

僕は甘いものは大好きなのだけどしばらく食べていない。

異世界に来てケーキが食べられるとは思っていなかった。

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