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うふと、えっぐと、プリンと、ゼーリと、菊池。


 生身での再会は初めてなので、うふとえっぐは、感動感激興奮してしまう。

 ぎゅーっと抱きついて喜びを表すうふ。

 たまご型ボディが縦に小刻みな振動を出し、本当に目の前に友達がいる驚きを出しているえっぐ。


「あのね、あのね。私とゼーリとても困ってるんだ!」


 妖精さんと一緒にいる口実として、プリンはニコニコしながら困っている事を伝える。

 パッと顔を上げて、期待の眼差しを送る、うふとえっぐ。


「お手伝い必要?」


 えっぐは縦の振動が期待のものに変わり、キラキラした目を出す。

 友達と一緒にいるのに、理由は必要ないけれど、どうせならお手伝いして過ごしたいのが、お手伝い妖精の本能である。


「うん、わからないことがあって、困っているのさ!」

「ですでス!」


 プリンとゼーリも友との再会は嬉しいのだ。

 みんなでニコニコしあう。


「……あれ? わかんないことって、プリンやゼーリはすごい板で調べたら、すぐにわかるんじゃ?」


 えっぐは体と耳を大きく傾ける。

 生活様式がアナログ気味の妖精さんたちは、プリンたちの生活様式のすごさを覚えていた。

 プリンの下半身が収まっている、移動用ポッドと呼ばれるすごい装置には、通訳・調べ物・お買い物などなど色々機能がモリモリついている。

 ゼーリの頭にあるアンテナも、うふ・えっぐに言葉を届ける翻訳装置である。


「じつは、メロンクリームソーダってのが、私とゼーリの板では、調べてもわからないんだ……」


 タブレット端末の事を、妖精さんは板と呼ぶのでそれに合わせた言葉で伝えるプリン。


「そうなんですヨ。なのデ、ご存知のおふたりに教えて頂こうと参った次第でス」


 プリンは軽い冗談などは言ったりするが、ゼーリは真面目な性格なのか、冗談はあまり言わないため、メロンクリームソーダの検索結果が不明なのは事実のようだ。

 知りたいことを教えてくれる板が、機能していない事にびっくりするうふ。


「うーん、でも作り方、うふもわかんない!」

「えっぐたちが見たのは、緑色のしゅわしゅわと、クリーム色のほわほわと、赤いつやぷるがあったよ」


 やはり、オノマトペで、使用されているものがわからない状態だ。

 わかっているのは、飲み物ということだけ。ゼーリとプリンは見合ってちょっと首を振る。


「あ、それじゃあ、湖に飛び込んで、探しに行く?」


 えっぐはうふに言葉を送る。


「そうだね。ゼーリとプリンが知りたくて困ってるから、行けると思う!」


 以前、ゼーリが困っていて、ゼーリを助けるために一緒に湖に入ったら、ゼーリの困りごとを解消してくれる人であったプリンのもとへ辿り着けたのだ。

 今回は、みんなで飛び込んで、メロンクリームソーダにあえるところへ行こうと、うふは頷く。


 プリンとゼーリが乗ってきた筒状の小型宇宙船は、エッグの家の横に置いて、光学迷彩機能をオンにすれば、他の妖精さんたちに見えなくなり、彼らを不安にすることもなく駐車ならぬ駐船が出来る。


「こっちー!」


 うふはプリンの手を取って、とてとて走る。その横をえっぐは小さな足を動かし全速力で、とてとて走る。

 ゼーリはプリンの浮遊しているポッドに乗り運んでもらう。


 島の真ん中に到着して、えっぐはうふと手を繋ぎ、うふとプリンが手を繋ぎ、ゼーリをプリンが抱えて、みんなしっかり繋がると、湖に飛び込んだ。



 そしてフッと出てきた場所は、固い地面のあるところだ。

 アスファルトが夏の日差しを受けて、ジリジリ熱を帯びている。


「「あっつーーーい!!」」


 うふとえっぐは慌てて羽を出して、飛び上がる。


「だ、大丈夫ですカ?!」


 普段の、のんびりおっとりな妖精さんたちからは、中々聞くことのない悲鳴のような声に、ゼーリは全身を震わせて心配の声を上げる。


「びっくりしたー!」

「地面がすごく熱いよ、ここ」


 すぐ地面から離れたので、怪我するほどの火傷は負ってないながらも、危険な事を伝えるえっぐ。


「うわ、気温が38度ですって……そして、地面の温度は現在59度だそうです」


 プリンはポッドから出ているディスプレイを操作して、周りの情報を集めて教えてくれた。

 そして、この気温は宇宙人であるプリンやゼーリ、妖精さんであるうふやえっぐにも、しんどいようだ。


「うふ、えっぐ。ポッドのふちに乗って! 冷却層を展開するよ」

「このポッドの周りの空気ヲ、ひんやりさせてくれるんですヨ」


 暑さをなんとかするために、プリンはポッドの機能を使い、ポッド周りの温度を下げたようだ。

 なので、ポッドのふちに乗れば、ひんやりを共有できるので、みんなプリンのポッドに乗る。

 どう見ても過剰積載な状態にではあるものの、ポッドの耐久的には問題ないようだ。


「あー、びっくりした! ありがと、プリン!」

「ひんやりだ。ありがとう、プリン」


 ポッドのふちに乗って、自分にぴったりくっついてくる可愛らしい妖精さんに、プリンの心は和む。


「いえいえ。ポッドのひんやり装置は、浄化効果もあって、地面についていた足の汚れも落としてくれるよ」


 超ハイテクのシステム説明では理解できない妖精さんたちへ、プリンはわかりやすい言葉を渡すと、再度妖精さんたちはお礼を口にする。


「ところデ、クリームソーダとやらはどこでしょうカ??」


 妖精さんの島の湖に飛び込めば、目的地に辿り着けるはず。

 クリームソーダに会える場所のはずだが、車も通っておらず、信号もない住宅街のど真ん中である。

 見慣れない光景ながら、周りに人がいないことに、ゼーリは安心しつつ、視界での探索をしていた。


「あれ、あの、おうちの塊……」


 えっぐがちいさなおててを、めいっぱい伸ばして、示す先は1棟のアパートだ。


「菊池の家!」


 うふは声を上げる。

 昔、お片付けを教えるお手伝いをした、菊池という女性が住んでいたアパートの外観そっくりである。


「クリームソーダを教えてくれた、菊池のところに来たのか……な?」


 えっぐが、疑問を口にしながら何となく納得したようだ。


「菊池いるかなー?」


 うふがアパートのドアのひとつを指し示す。

 プリンは頷いて、ポッドをそちらへ向けて動かしドアの前に来た。

 ポッドのふちに座っていると、インターホンを押しやすい高さだったので、ちょっと嬉しくなる。

 うふはそのままの位置から、手を伸ばして四角いボタンを押す。


 ピンポーン


 家の外からも、家の中にインターホンが鳴ったことがわかる。

 いるかいないか、わからないながら、うふとえっぐはドキドキして、応答を待つ。


「はーい」


 中から声が聞こえた。その声を聞いて、うふとえっぐの顔はとても明るくなった。


「「菊池ーーー!!!」」


 嬉しくなって、声を明るい上げて呼ぶ。


「……えっ」


 中から戸惑いの声が一瞬聞こえたと思ったら、ドタドタと駆けてくる音が響き、ガチャガチャと慌てながらしていそうな開錠音が鳴り、扉がすごい勢いで開いた。


「うふ……と、……えっぐ?」

「「久しぶりー!!」」


 妖精さんたちは、手をめいっぱい上にあげ、ぶんぶん振って再開を喜ぶ声を上げる。


挿絵(By みてみん)


「うそ、ほんとに……10年振りじゃん……マジで?」


 ずっと会いたいと思っていた妖精さんたちに、10年越しの再会である。

 涙がじわりと出てきたものの、うふ・えっぐのほか、何やら視界に見慣れた見慣れないものが入り、涙が引っ込んだ。

 菊池の視界には、日本ではグレイと呼ばれる宇宙人のテンプレートみたいなのが、どどんと入ってしまった。


「え……っと? その、どちら様……?」


 今の時代、コスプレイヤーのクオリティは爆上がりである。何かしらのコスプレイヤーが宇宙人の格好をしていて、特殊メイクなどでそれっぽく見せていたっておかしくない。

 そのため、宇宙人ーー!! と、悲鳴をあげるよりは、人間である可能性が頭にフッと浮かんでしまうのだ。


「私は、#×%☆>のプリンです」


 聞き慣れない単語が飛んできた。


「ワタシは%#@÷/%地区にあるエルダティア星からまいりましタ、ゼーリと申しまス」


 ちょっといびつな音に聞こえるが、半分くらいは聞き取れた、ゼリーのような生物にも気づいた菊池。

 外の暑さをじわりと感じてしまい、みんなを家の中に招き入れた。

 よくよく見ると、プリンの下半身の物体は浮いていた。

 床から離れている。


「えっと……その……」


 事態が飲み込めない菊池の言葉は、しどろもどろだったが、うふがプリンのポッドから飛び降りて菊池の部屋を見回す。


「わー! 菊池のお家キレイなまま!」


 えっぐも、ポッドの上から見える台所を見て頷く。


「台所もピカピカ!」


 汚部屋住まいだった菊池。

 うふとえっぐに会って片付けを覚えて、整頓を覚えて、料理を覚えて、その後妖精さんたちとお別れをした。

 だが、それからもしっかり自分自身で調べ、学び、色々やっているうちに、いつの間にか配信を始め、有名になり、収納アドバイザーとしても活躍する。


「あ、あれから10年、ちゃんと自分と自分の周りを大事にしてるんだよ!」


 菊池はえっへんと言いたそうな顔をして、えっぐに胸を張って報告した。 


「うん、モノたちも、菊池が大事にしてくれて喜んでいる!」

「ちゃんと大事にしてくれて、菊池もまわりも大事にしあってる。すてき」


 うふとえっぐはニコニコして、菊池に言葉を渡す。

 モノの心が見える妖精さんたちは、菊池がしっかり自分と周りに向き合って生きていることがわかり、安心した。

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