クリームソーダはUnknown
コロンさま主催、クリームソーダ祭り参加作品です。
【宇宙人企画】えっぐと うふと、宇宙人なともだち。 〜お手伝い妖精の不思議な出会い〜
https://ncode.syosetu.com/n5959iz/
【菊池祭り】菊池はお片づけを教えてもらう。
https://ncode.syosetu.com/n2057jj/
の、続編になります。
上記2つは別々のお話になります。
――とある宇宙の、とある銀河
宇宙船が1艘、宇宙空間を飛んでいる。その中には銀色の宇宙人らしい見た目をした人がいた。
自分の目の前にあるスクリーンをぺたぺた触り操作をすると、音声通話モードになった表示がスクリーンへ映し出される。
その音声通話を受けた相手は、応答してくれたらしく、言葉が返ってくる。
『はいはイ、こちらゼーリですヨ』
「こんにちは、ゼーリ。今、休暇中だったよね?」
『えェ、2年ほど有給溜まっておりましテ、流石に上官から怒られてしまイ、最低半年は休めとお休みをいただきましタ。どうされましタ?』
「私ね、こないだ、うふとえっぐからお手紙をもらった時に、気になったものを調べていたんだよ」
『あレ? なんかありましたっケ??」
銀色の人は、ゴクリと唾を飲み込みゆっくり口を開く。
「クリームソーダ、ってなんだろうって」
『あッ、そういえば「菊池のお家でクリームソーダを飲んだよ」って言ってましたね』
ゼーリはもらった音声お手紙を思いかえす。
――2日前。ゼーリの自宅
「有給取らなかったからって怒られましたよ……。宇宙空間の巡回してたら、有給なんて取れるわけないじゃないですか……」
プルプルゼリーのような形をした宇宙人であるゼーリ。
いろんな銀河が加入している連合があり、連合管轄の宇宙巡視局といわれる場所で働いていて、銀河間のパトロールが主な仕事だ。
1度出発をすると、1ヶ月から長くて半年は帰って来れず。
しかし、世の中がお休みはしっかり取ろうブームになってしまい、そのため事情があって取れなかった人でも悪者扱いをされてしまい、ゼーリは憤慨した。
取れる環境をください、と申し立てたら今までの溜まりに溜まっていた有給を一気に消化してこいとなって、ロングバケーションとなった。
そして帰宅後に、銀色の友人へ、休暇が手に入ったメールを送った。
「ふー……。長い休みだし、別の星にでも旅行へ行ってしまおうか……。おや、お手紙が」
うさぎ型の箱についている耳が、ゆらゆら揺れている。
うさぎの耳を持つ妖精である友達の、うふとえっぐからのお手紙が、届いている合図である。いそいそと箱を開ける。
紙の封筒とお花のシールが貼ってあり、ぺりぺりっと剥がすと、紙から音声が流れる。
遠くの星に住む友と交わす文通ならぬ、ボイスメッセージのやり取りをしていた。
『こんにちは〜、ゼーリ! お手伝いに行ってきたのー!』
紙から流れてくる声。明るい声色に、ピンクのヒョロンとしたうさぎ耳の妖精、うふを思い浮かべるゼーリ。
『お片付けを知らなかった人でね、いっぱい覚えてくれたみたいなのー。菊池といっぱいご飯作ったんだー』
ぽやんとした感じの声が届いて、うさぎの耳が生えたたまご型ボディの妖精、えっぐを思い浮かべる。
「この間のお手紙には、お手伝いに行ってくる、とあったので、帰ってきたようですね。お疲れ様です」
妖精の友達からのお手紙は、とても心が和む。ゼーリは体が思わずへにゃりとゆるんでいた。
届かないながらも、つい言葉を渡してしまう。
『でね、でね。菊池のお家でメロンクリームソーダを飲んだの! 菊池が買ってくれたんだよー!』
『パチパチしてシュシュっとした飲みごたえだけど、その後ふわーんとした味になるのー』
メロンクリームソーダというものの説明をしてくれる、妖精さんたちの弾んだ声。
が、オノマトペまみれで、いまいち想像がつかない。しかし、とてもおいしかったのだろう。
うふやえっぐに美味しい物をあげた見知らぬ菊池へ、ゼーリは感謝の気持ちを送る。
――今現在
『そういえバ、おっしゃってましたネ、メロンクリームソーダ――というものヲ』
「そう、それで私気になって調べたんだ! そうしたらUnknownって出たんだよ?!」
『なんですト?! ちょっとワタシも調べてみましょうカ』
スピーカーから、ピッピッピと操作音が流れる。
ゼーリもメロンクリームソーダを検索しているはずだ。
『わッ、本当ですネ! プリンさんと同じ結果になりましタ!!』
銀色の人――プリンは、相手に見えないながらも、うんうん頷いている。
「気にならない?」
『そりャ、なりますけド……調べようないと思いますヨ……』
「知っている本人たちに、聞きに行けばいいんだよ!」
パン、っと手を叩いてにっこり笑うプリン。顔も仕草も見えないが、手を叩いた音はゼーリに届いている。
『まさカ……』
「後35分で、ゼーリの住む星に着くから、旅行の準備よろしく〜! うふとえっぐのお家に行くよー!」
『やけに遅延なく音声が届くと思ったラ、近くまで来てるんですカ!! わかりましたヨ、ワタシもすでにメロンクリームソーダが気になってしまっていますかラ……』
そうして切られた音声通話。
宇宙船は宣言通りゼーリを拾い、うふとえっぐがいる星へ飛び立って行った。
ここは、妖精さんが住む島。
お空にぷかぷか浮いていて、島にはお星様の形をしたお花がゆらゆら揺れて、ハートの形をした木の実がなっていたり、綿菓子のような雲が浮いていたり。
そんな島に住む妖精さんたちは、色や形が違っていても、みんなウサギのように長いお耳が生えている。
ピンク色のヒョロンとした体を持つ妖精さん、うふはスキップしながら友達のえっぐの家へ向かっていた。
「えっぐー!」
「いらっしゃーい、うふ!」
きのこの形をしたお家に入るうふ。
家の中で待っていた、たまご型ボディな妖精さん、えっぐの小さなそれぞれの手には、手紙がひとつずつ挟まっている。
友達から届いた音声手紙を開封して、一緒に聞くために、うふはえっぐの家にやってきた。
「どっちから届いたのー?」
「プリンからー」
えっぐはお手紙をふたつ見せてニコニコ。
うふも中身の音を早く聴きたくてワクワク。
ひとつ、開けると……
『こちら、プリン。いま、WSK8451地域にいます』
これだけだった。
「よくわかんないね……」
えっぐは体を大きく傾ける。おそらく首を傾げている。
「うちゅーの住所だと思うけど、わかんないや!」
細かい事を気にしても仕方のない事。うふは笑い飛ばす。
妖精さんたちは、宇宙の発達した科学はよくわからない。
なので、プリンが伝える言葉もわからなかったが、元気にしている報告だろうとうなずいて、もうひとつの手紙を開ける。
『こちらプリン、いまASG220に到着』
また、同じような言葉で、元気そうな声ににっこり笑う。
「あれ、また手紙届いたよ」
箱が光ると手紙が入っている証だ。それに気づいたうふ。箱を開けると、封筒がひとつ。
えっぐも頷くので、うふは手紙を開ける。
『こちらプリン。お空にぷかぷか浮いている島にいます。お星様の形をしたお花が、ゆらゆら揺れています。ハートの形をした木の実がなっていたり、綿菓子のような雲が浮いていたりする島です。目の前にはキノコの形をしたお家が見えます』
どこかで聞いたことある島の風景。
「「えーーーー?!」」
そう、この島のことや、えっぐの住むおうちの事を言っているような言葉に、うふとえっぐは飛び上がって慌てて外に出た。
ドアを開けた先に見えたのは、白い筒。
筒の一部がスライドしたら、中から銀色の友とゼリー型の友の姿が見えた。
「こんにちは。えっぐ、うふ。遊びにきたよ!」
「お久しぶりでス。お元気してましタ?」
プリンとゼーリが目の前にいた。
何年振りに会うのかはわからないけれど、2人とも変わりなく元気そうで、うふとえっぐは駆け寄って抱きついた。
「わーーー!! わーーーー!!」
「久しぶりー。えっぐたち元気だよ」
うふは言葉が出ず、しかし満面の笑みでプリンをぎゅーっと抱きしめる。
えっぐはにっこり笑って、小さなおててをキュッと挙げる。
妖精さんたちは、困っている人を助けるのが大好きで、お手伝い妖精と言われている。
この島の真ん中にある湖に飛び込むと、困っている人のところへ行けるのだ。
しかし、お手伝いが終わるとお別れだ。
過去にお手伝いをしたプリンとゼーリは、友達として交流が続いているが、それはプリンの住んでいる星の科学技術が超発達しており、プリンはそこの技術者だから、遠くの星へもお手紙が送れる装置を作ったり出来る。
他の人とはそんな風に交流できないため、妖精さんたちの出会いというのは、一期一会状態であった。