20階 ボス戦後 2
盾と強盗の装備品はマジックバッグにしまって、強盗の生き残りはブタちゃんに運んでもらう。男は担ぐときに目を覚まして暴れたが、自分の状況が解ったのかすぐ大人しくなった。
「おい、なんでお前らは俺たちの事を狙ったんだ?」 「…………」
無視されてしまった。もう面倒なのでギルドに任せたほうがいいか? きっとバウンティーハンターギルドっていうのがこっちの世界の警察的な役割を果たしているのだろう。
「無視でもいいけどな、あとはバウンティーハンターギルドに任せるよ」
バウンティーハンターギルドの名前を聞くと急に男は話し出した。
「何言ってるんだ? お前たちが急に襲ってきやがって俺がギルドに訴えるからな。俺はバウンティーハンターだぞ? 解ったらさっさと降ろせ!」
男はまた暴れだした。しかしどういう事だろうか? あきらかにボウガンを持っていた奴らの仲間だったようだが……。
「そっちこそ何を言ってるんだ? お前らがボウガンで先に撃ってきたのだろう」
「ああ、お前は勘違いしているようだな。俺はあのボウガンを持っている奴らを捕まえようとしていたバウンティーハンターだ。あのボウガンコンビはダンジョンボス終わりの弱ったパーティーを獲物にしている賞金首だ」
「確かに最悪のタイミングで襲われたな。後は帰るだけだと油断していた」
「そうだろう。特にこの20階ボスの後は解毒ポーションを切らしているパーティーが多いから被害が多いんだ。解ったら早く放せ。あいつらの死体を持って帰らないと賞金が貰えないぞ」
「死体を持って行かないといけないのか? 2体も運べないぞ?」
「いやいや、お前らはマジックバッグ持ってるだろう? それは死体なら人間だって運べるぞ」
そうなのか……。死体丸ごとこんな小さなバッグに入るとは思わなかった。レッサーバイソンの解体なんて孤児院戻ってからでも良かったのか…………。
それにしても、この男は怪しい。強盗の手口に詳しすぎるし、俺たちがマジックバッグを持っているような上級探索者にみえるのだろうか?
「なるほど、そうかバウンティーハンターだったのか。そりゃ悪いことしたな。今ロープ解いてやるから、外まで一緒にいくか?」
「おお、俺はこの辺詳しいからな、次のゲートまで案内するぜ」
『ザイードをパーティーに加入しますか?』
よし、ステータスチェックだ。こいつはどんな奴かな?
名前 ザイード
種族 人間 性別 男
職業 強盗(賞金首)
レベル 20
スキル 剣術6、弓術6、威圧2、暗殺2、毒使い3
見事に真っ黒じゃないか…………。
しかしこうやってステータスをみると結構強そうな奴だな。ブタちゃんは一発で倒していたけど、まあロープは解かない方がいいだろう。
「マコト兄ちゃん! そいつは何だか怪しいぜ。ロープは解かないでバウンティーハンターギルドに連れて行こう。そうすれば解るさ」
「待てよ、坊主。この状態で連れて行かれたら俺はお前たちから急に襲われたと訴えるぜ。俺はバウンティーハンターだからな。ギルドの連中がどちらを信じるかは考えれば解るだろう? とにかくこんな情けない恰好でギルドに連れて行かれるのは困る。ここで開放してくれ!」
こいつの職業は強盗だがバウンティーハンターギルドに所属している可能性はあるなあ。もちろん、それも嘘の可能性もあるけど…………。
「別にお前が何を言おうと関係ないぜ。バウンティーハンターギルドにはテミスの天秤があるんだから、お前が強盗の仲間なのかどうかはすぐ解るぜ」
「いや、だから坊主よ。テミスの天秤で俺の無実が証明されても、こんな格好でギルドにいったら俺は周りに舐められてお終いな訳よ。そこを解ってくれないかなあ?」
「なんだテミスの天秤って?」
また俺の知らない単語が出てきた。バウンティーハンターギルド自体を知らなかったからしょうがないか。
「バウンティーハンターギルドにはお互い意見が食い違った時や、嘘ついてる奴がいないか調べるためにテミスの天秤っていう魔道具が置いてあるんだぜ。テミスの天秤があればどっちが正しいことを言っているか解るんだ」
「それじゃあ俺たちがこの男は強盗だと言って、この男が違うと言ったらどっちが正解か解るって事か?」
「そういうことだぜ」
異世界凄いな。俺が居た日本より進んでいるんじゃないか? 誤認逮捕も不正もできないって事か…………。
でも、もし偽物の天秤があったら逆に不正し放題だから怖い面もあるのか? まあ強盗ぐらいで偽物の天秤は出てこないだろう。きっとこの世界の偉い人たちがもっと悪いことする時に使うよね。
「だからそれじゃあ俺が困る訳よ。俺が無実だったらどう責任取ってくれるわけ?」
「いや、お前はきっと強盗だからこのまま引き渡す。ブタちゃん、こいつはうるさいから口もロープで縛って」
なんかまだモゴモゴ言っているが、もう話を聞く必要はない。マジックバッグに死体やら全部放り込んで次のゲートを目指す。ケインが次のゲートまでの道は把握済みだから良かった――――。




