4 アカネの気持ち
足の長いアカネは、軽く走ってもかなりのスピードを出せた。
だから、狩りで獲物を追い込む際、一人前に重宝がられて何体もの大物を仕留めることに貢献してきた。
大人に混じって十分な成果を出してきたし、同年代の男でアカネの脚力にかなう者もいなかったのだ。
だから、女というだけで狩場にも近寄れないというのは、納得できることではなかった。
なんだよ、男だ、女だって区別して!
確かに、あたしは今年十五になった。
だからって、なんで急に女にならなければいけないんだ。
アカネにも女心がないわけではない。
身綺麗にするのは苦手だったが、レナのように女らしい可愛い子になりたかったし、仲睦まじい恋人や夫婦には憧れた。大きくなったら自分にも当たり前のように、好きな相手が出来るものだと思っていた。
しかし、いつまで経ってもそんな相手が出来ないことに気づいたのは、いつだっただろうか。
同い年の女子たちが顔を合わせれば恋の話をするようになって、肩身の狭い思いを何度したことだろう。
親を早くになくし、叔父夫婦に世話になっていたアカネは、決して夢見がちでも無頼でもなかった。
貧しい村で大人の女になるということは、誰かの妻になり母になることだということも分かっていた。
あたしは大人になんかなれない。
いつまでたっても出来損ないの子供なんだ。
駄々っ子のように思い、自分に舌打ちした。
なれないんじゃない。
本当はなりたくないだけだ。
こんなことを考えるなんて、自分はなんて幼いんだろう。
微かに歌と手拍子が聞こえ、我に返った。
春祭りの舞台となる高台では、本番に向けて巫女舞の練習が毎日行われている。無意識にずいぶんと駆けてきてしまったようだ。
せっかくここまで来たのだからと、アカネは近くまで行ってみることにした。