プロローグ
こんな昔語りがある。
この世界のどこかには
不思議な力の一族が
尊い神々、珠に変え
思い通りに力をふるう
万の力、永久の命
彼らの国は大きく栄え
あるときすべて
消え去った
とおい、とおい、昔の話
どこの誰が作ったか分からないくらい昔から言い伝わるお話で、ホントか嘘かは誰も知らない。
でもそんな不思議な力を持つ一族が、世界のどこかにいるんだと、人々は何となく信じていた。
だから、死の大地と呼ばれる北の大陸を渡ってきたスオウ一族は最初、妖しい術者の末裔だとか、滅んだ王国の生き残りではないかと噂された。
しかし実際彼らは、ただの信心深い一族だった。
大小さまざまな国が全国統治を目指して争う戦乱の時代、ある国の国王が戦に使えるかもと臣下にしたが、まるで役立たず。
戦場では勝利をひたすら願うだけのでくのぼう。
戦いの最中ぶつぶつとひたすら祈り続ける彼らは、かなり気味が悪かったという。
戦いの末に全国を統一した王は、お情けで彼らを神職の長、神祇官に命じた。
神が信じられ、神を祀る者は尊敬を受ける世の中。
神祇官はそれなりに地位が高かった。
ほぼ何もしなかった彼らだが、ラッキーなことに人並み以上の暮らしを手に入れることができた。
代々神祇官を務め、安定した収入と地位を手に入れた彼らは、不思議なほど欲がなかった。
さすが神に仕える神祇官様だと、尊敬を受けた。
偉ぶらず、富も望まず、古参の神祇官として家柄の尊さのみを磨いていった。
それが彼らの望みだった。
しかし一人の娘が産まれたことで、予定調和は狂っていく。
娘は、スオウ一族の姫巫女だった。
スオウに産まれた女は例外なく巫女となり、誰とも結婚せずに生涯を全うする。
これは一族の神を祀るためとも、血を他家へ流さないためともいわれる、彼らの鉄のルールだ。
しかし、娘は他家へ嫁いだ。
他家とは、王家だった。
彼女は少しばかり器量が良すぎたのだ。
そのたぐいまれな評判を聞きつけた国王が、あらゆる手段を用いて彼女を王宮へ入れ、妃にした。
幸か不幸か寵愛は続き、子にも恵まれた。
スオウ一族は王家との強い結びつきを得て、ただの神祇官ではいられなくなった。
味方も敵も双方増え、否が応でも羨望と嫉妬の的になった。
当時の当主には、それらを上手くまとめることが出来なかった。
王家への謀反を企てた罪を負わされ、一族は一夜にして滅亡した。
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