お姉ちゃんとお風呂
「お帰りなさいませ、お嬢様」
特に変化も無く過ごしていたとある日。
珍しく家に来客があった。
来客と言うよりは帰宅なんだけど、学校に通っていたお姉ちゃんが長期休暇で帰ってきたのだ。
「おかえり、お姉ちゃん」
「ただいまヒカル」
相変わらず鮮やかな髪色。
ここまでオレンジ色なのも珍し……くないな。晩餐会の時とかチラホラいたな。
王都に行った時は会えなかったから結構久しぶりだ。
「おかえりウィズ。また大きくなったわね」
「ただいまママ」
こう見ると、お母さんとお姉ちゃんって親子だな。
声とか雰囲気とかが似てる。
お母さんの髪色もオレンジに近い色だし。
「色々話は聞きたいけど、疲れたわよね。とりあえず休んでちょうだい」
「うん、そうする。私お風呂入りたい」
少し話は逸れるけど、僕たちエクスウェル家が治めてる土地はこの国の南のあたり。
そして南東の方には勇者様が作った国がある。
その国から色々な文化が流れてきてここら辺は発展してる。その中にお風呂がある。
「……一緒に入る?」
「うん!」
お風呂はかなり貴重。日本みたいに普段使いは出来ない。
一応、魔法とかでそれっぽいことは出来るけど。
それに、僕はまだ子供だから1人でお風呂に入るのは禁止されてる。
なのでお風呂に入れるチャンスは家族と一緒の時なのだ。
恥ずかしさ? ……家族の間にそんなものは無い。
「はぁー落ち着く」
「好きだねぇお風呂」
「ヒカルのおかげでね」
ちゃっぽーん、とそんな音が聞こえそうな雰囲気。
僕が産まれる前からお風呂はあった。んだけどなんとも質素というかつまらない造りだった。
本当にただ体を清めるためだけって感じ。だからお父さんにお願いしてThe日本みたいな木造にしてもらった。
それまで必要最低限だったお風呂が、家族みんな定期的に入ることになったキッカケでもある。
最初は僕だけ喜んでたのに、いつの間にかお風呂を1番気に入ってるのはお姉ちゃんだ。
「今じゃお風呂無い生活がちょっとストレスなくらい」
「お姉ちゃん魔法使えるんでしょ? お風呂自分で作っちゃえば?」
「サラッと言ってくれるわね。魔法ってそんな簡単じゃないのよ。……出来るけど疲れるわ」
出来るんだ。
僕自分で言っといて無理だと思ってた。
流石お姉ちゃん。凄腕の魔法使いらしいし。そう言えばそれが原因で僕が狙われたこともあったっけ。
「あ、そうだお姉ちゃん」
「なぁに?」
「魔法見せて!」
お色気なんてものはない。……今のところは
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