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骨ごと肉を断つ



「ラファンだな。比較的穏やかな森や平原に生息する魔物だ」


魔物……らしいけど見た目はごく普通のウサギ。

まぁ大きさはこっちの方が遥かに大きいけど。

大型犬くらいの大きさのウサギはひどく怯えた様子でこちらを警戒してる。


「魔物の中でもかなり臆病で、角や爪も持たない下級生物。とは言え魔物だ。油断してると容易に命を落とす」


グラルドさんの説明に僕や新兵の皆は唾を飲む。

窮鼠猫を噛むとも言うし、油断はしちゃいけない。

でも、いざ魔物を目の前にすると……少し怖い。寒い時みたいに体が震えてる。


「なっはっは。ほらお前らもヒカル様を見習え。初めての魔物相手に武者震いしておられるぞ」

「え?」

「ワクワクしてるのは分かりますが、そんな満面の笑みを浮かべなくとも」


え、僕笑ってる?

あホントだ。口角が上がってら。

気付かないうちに笑ってたらしい。じゃあこの震えって本当に武者震い?


「ようし、ならヒカル様に手本を見せてもらおうか」

「僕最初?」


みんなの眼差しが。

そこまで言うんだったらしょうがない。1番は僕が貰おう。


「ラファンは攻撃を避けない。迫られると混乱してこちらに飛び掛ってくる。だからその瞬間を狙ってカウンター気味に首を狙うのが一般的だ」

「分かった」


突進が来ると分かっていれば。

練習通り、いつも通り。……よし。

体の中で血みたいに魔力を循環させる身体強化。これを使えば僕も大人と同じくらいの力を出せる。

地面をしっかり踏み込んで突進。でもちゃんと避けられるように。


「……来る」


目の前の敵にだけ集中してると、色んなことが分かる。

怯えてはいるけどまだ闘志があって、赤い瞳は真っ直ぐ僕を見つめてる。

後ろ足が踏ん張ってるのも見えてる。

飛んでくるのは……この瞬間。


「ふっ!」


すれ違いざま、剣を振る。

魔力は最初から込めていた。後は振り切るだけ。

ウサギの首に当たった刃から柄、そして手のひらへと感覚が伝わる。

するするとまるで豆腐を切るように簡単に。


スパンっと子気味のいい音がして、世界の速度が元に戻る。


「ふぅ……」

「おぉーすげぇ!」


振り返るとそこにはウサギの死体。

見事に首のところで真っ二つになっている。

前世でも体験したことがない、動物を斬る感覚。それがまだ手に残ってる。

心は乱れてない。うん、平気。

でもこの感覚は……忘れなさそうな気がする。

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