初めての魔物討伐
「ほぉー……」
手のひらにズシッと感じる重量感。
これでも軽めに作られてるんだから驚きだ。
今僕が握ってるのは、僕のために調整して鋳造してくれた片手剣。
デザインや性能なんかは普通の片手剣と一緒だけど、僕でも動かせるようにかなり軽く、小柄に作られている。
「どうですか、握り心地は」
「……うん。いい感じ」
試しに素振りをすると、いつもとはちょっと違う音がする。
オーダーメイドの武器なんてワクワクするな〜。
さて、わざわざそんな武器を持って何をするかと言うと。
今日は魔物討伐の日だ。
少し時間を遡って2日前。
「魔物討伐?」
「うん。僕もやってみたいなって」
この世界には魔物と呼ばれる生物がいて、僕らの命を脅かしてる。
それを討伐するのが国の騎士や冒険者の主な仕事。
普段は人気のない森や平原にいるらしい。
そんな魔物の目撃情報が街の近くであったらしく、討伐することに。
腕試しがてらその討伐に加わりたいとお父さんにお願いした。
「魔物は危険だ。鋭い爪や牙でヒカルに襲いかかってくる」
「ちゃんと鍛えてるから平気だよ。グラルドさんには許可も貰ってるんだ。お願い!」
「グラルド……あいつめ」
グラルドさんは後でお父さんにこってり怒られたらしいけど、そんなこんなで僕も魔物討伐に同行していいことになった。
グラルドさんの話じゃ、出現した魔物はかなり弱い部類で、今回討伐隊を組んだのも新兵の訓練を兼ねてのことらしい。
僕も新兵みたいなものだし、ちょうどいい。
討伐隊は目撃情報のあった森のはずれに待機してる。兵士の1人が魔物を驚かしてこっちに誘導してくれるそうだ。
「うぅ……落ち着け、落ち着け」
「ほら、深呼吸」
僕と同じく、エルピス君も魔物討伐は初めてなんだとか。
いつもは大口叩いてるけど、今は緊張でウサギみたいになってる。
「ほら、見えてきたぞ」
「あれが……」
魔物。
動物との違いは、体の中に“魔石”と呼ばれる物質をもっているかどうか。
魔物の方が見た目の凶暴性が強いらしいけど、弱い個体は総じて普通の動物と似た見た目らしい。
実際、僕の目の前に現れたのもそんな感じの奴だった。
「……エルピス君?」
「誰が魔物だって!?」
いや、でも……。
僕たちの前に現れて、沢山の人に怯えてる赤い目のウサギ。
あれはどう見ても今のエルピス君にそっくりだ。
感想やブックマークお願いします!




