日々の鍛錬
「やっほ」
「いらっしゃいヒカル様」
最近、新しい習慣ができた。
改めて僕の家は大きい。伯爵家のお屋敷だから当然と言えば当然だけど。
ナターシャのような使用人もいて、同じ屋根の下でほとんどを過ごしてる。
そんな僕たちの胃袋を支えてくれているのがここ、厨房。
「嫌になったらいつでも辞めていいですからね?」
「大丈夫。僕がやりたくてやってるから」
料理長にお願いしたのは、洗い物。
僕たちや使用人たちの使った食器を洗う仕事を僕にやらせてもらっている。
理由は至って単純。水魔法の練習のためだ。
初級魔法に弱回転と言う魔法がある。名前の通り微弱な回転を起こす魔法。
この魔法を使って皿を洗うのだ。
少しでも威力が強いと皿に傷がついて最悪割れる。かと言って弱いと汚れが落ちない。
最近は魔力制御もある程度出来るようになったからいい練習になっている。
魔法の難易度が上がるほど、比例するように魔力の消費は増える。僕には都合がいい。
「しっかしヒカル様も物好きですな。練習を兼ねてるとはいえ、我々がやるような仕事をするなんて」
「いつも美味しいご飯作ってくれるからね。不味かったら手伝わないよ」
「わっははは。そんじゃこれからも誠心誠意作らせていただきます!」
「んふふ。頼んだぜコック」
彼は料理長のコック。名前がコックなのだ。
彼の作る料理は美味しい。離乳食で期待してなかったのもあるけど、初めて食べた時はビックリしたなぁ。
っとと、集中集中。
少しでも気を抜くと手元も、上も危ない。
万が一魔法が暴走しても平気なように、でっかい水球を庭の上空に展開させてる。
2つの魔法を同時に制御するのは難易度が高い。けど、あっちが僕の魔力を消費してくれるおかげでむしろ制御は簡単になってる。
我ながらよく分からない。
手のひらで2個同時に出すのはすごく難しいのに……。
先生からお墨付きを貰ったけど、魔法制御はかなりの精度が出せている。
やはり僕の課題は魔力量の調整。ひたすら鍛えるしか解決方法はないのだろうか。
何かいい手があればいいんだけど。
いつまでも今みたいにどデカい魔法を使って誤魔化す訳には行かない。
「よし、終わり」
「いやぁ助かります。ヒカル様が洗ってくれるといつもより綺麗になるんですよ」
「それは良かった。またやらせてもらうからお願いね」
さて、どうしようか。
大変遅くなりました。指差し確認大事
感想やブックマークもぜひお願いします!




