理解っちゃった
「くそっ、つええ」
ちょっと強く投げすぎたかな。
全然起き上がらない。
「言っただろエルピス。ヒカル様は強いって」
「なんだでよ。俺の方が毎日っ……くそ」
相当悔しいみたい。
確かに惜しかったもんな。僕は防戦一方だったし。
この子が体力なくて真っ直ぐにしか攻撃してこなかったからどうにか勝てたけど、もっと体力があったり器用に攻撃してきたら負けた可能性も充分あった。
「強かったよ」
「……そーかい」
ちょっと嬉しそう。チョロイな。
にしても、同い年にしては随分良い体格をしてる。いや、僕が小柄なのか?
鍛錬のおかげで肉付きは良くなってる方だと思うけど、イマイチ背が伸びないんだよね。
そろそろ可愛いよりもカッコイイって言われたい年頃なんだけど。
「挨拶もすんだことだし、本題と行きましょうか」
お、キタキタ。
最初のインパクトで全部持ってかれるところだった。
今日ここに来たのは他の人が魔力通しする様子を見せてもらうためだったや。
「それじゃ、ほれ。いつもみたいにやってみろ」
「…………ふぅ」
グラルドさんから剣を受け取って、正面で構える。
ふむ。
この子、エルピス君は他の子より魔力が多いっぼい。
おかげでよく見える。
「……ぐっ」
「集中しろ。剣は体の一部だ。手足の延長だと認識しろ」
こんな感じになってるんだ。
凄い。魔力の動きが鮮明に見える。
「なぁ……これじゃ集中出来ねぇよ」
「今日は我慢してくれ」
よく見ると体の表面に薄い膜がある。
体の中にある魔力はこの膜を通って外に放出されてるみたいだ。
手から魔力は滲み出てるけど、空気中に霧散しちゃって柄には流れていない。
「……ねぇ、刃からは通せるんだよね?」
「あたぼーよ。なんたって俺は天才だからな!」
「じゃ、やって」
魔力が通るところを見たい。
何か、あと少しで解決する気がする。
「…………通すぞ」
刃に手が触れた瞬間、その部分の膜が消えた。
いや、消えたんじゃないな。膜が繋がった……?
でも膜がある様子なんて無かっ、た。
「うおっ。なぁコイツなんなんだ!?」
「ヒカル様だ。我々が使えるエクスウェル家の次男だ」
「そういう事じゃねぇ!」
手に魔力を集める。
そして、その手を物質に近づけて。
……ははーん。
これ、僕理解っちゃいました。
「貸して」
「お、おう……」
観察してみれば簡単な事だった。
もっと早く気づけたら良かったな。
「……な、眩しっ」
「よし」
やっぱり。
これで魔力通しは成功だ。
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