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次のステップへ



最初こそ激動と言える日々だったけど、慣れてしまえばルーティンになる。


「ヒカル様、そろそろ次のステップに進みませんかい?」

「次?」


始めてから三ヶ月くらい。

鍛錬の休憩中にグラルドさんからそんな提案をされた。

確かに、これ以上の負荷は体に悪いし新しさが欲しい気持ちはある。


「今やってるのは肉体造りの鍛錬。そろそろ体を“動かす”鍛錬をしてもいい頃だと思いますぜ」


ふむ。

正直何言われても断るつもりでいたけど、そんな誘い方されちゃあ興味が湧いて来ちゃうじゃないか。


「構えや素振りは知っておくだけでもいい。いざって時に役立ちますし、体造りにもなります」

「うーん」


確かに、素振りくらいなら。……もう少しあとに取り組むつもりだったけど、こういったことはグラルドさんの方が一日の長がある。

従った方がいいのかもしれない。


「…………ちょっとだけ、なら」

「そう来なくっちゃ! 基礎ばっかで退屈してたんすよ」


本心漏れてるって。

まあいいけど。


「早速今日から始めましょうか」

「え、いや今日はちょっと」

「大丈夫。俺に任してくださいよ!」


グラルドさん容赦なく追い込んでくるからすでに疲労困憊なんだけど。

若さで何とかなってるだけで鍛錬の次の日滅茶苦茶しんどいんだけど。


「あ、その顔絶対信じてない。これに関しちゃ本当に大丈夫ですよ」


そういうグラルドさんの手にはいつの間にか剣が握られていた。ほんといつの間に。

木製の片手剣をおもちゃみたいにひゅんひゅん回して見せる。


「体で覚えるのも大事ですが、その前に頭に叩き込む必要があります。体はヘロヘロでも頭はまだ元気でしょう?」

「僕、明日勉強の日なんだけど」

「若いんですから頑張って。さ、行きますよ」


なんか何時もより厳しくない?

今日ばっかりは他の兵士さんたちがグラルドさんのこと陰で鬼兵士長って呼んでる気持ちがわかる。

覚悟を決めた方がよさそうだ。


「これは片手剣です。ま、最もポピュラーな武器ですな」

「それ軽いの?」

「数ある武器の中じゃ軽い部類でしょうな」


そういう意味じゃないんだけど。

会話しながらぶんぶん振り回してるから物凄い気になる。逆手で持ったり手を変えたりと変幻自在だ。

しかも段々早くなってない? これをやれって言われても出来る自信ないよ。

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