過去から未来への手紙
見た目は至って普通。
日本語で書かれていること以外に他との違いは無さそうだ。
ま、その書かれてる文字が一番肝心なところなんだけどね。
タイトルは『エクスウェル伝記』。
……ただの伝記じゃないよね?
ちょっと不安になるけど、中身は全く違うことが書かれているはずだ。
とにかく、ページをめくろう。
『この本を読んでいる、読めているという事はきっと俺と同じ世界の住人だろう。突然の事で混乱しているかもしれないが、落ち着いて読んでほしい』
『俺は、神を自称する存在によって殺される直前、この世界に飛ばされた』
神を自称する存在……僕と同じ相手かな。
『俺は勇者として召喚され、戦うことを強いられた。召喚の影響なのか俺には力があったのでどうにか死なずに役目を全うした』
『だが、そんな俺の目の前にまたあの自称神が現れた』
うげ。
せっかく異世界に来たのにあの変人いるの。
会いたくないな。
『奴の目的は分からない。だが俺だけじゃなく、地球人を狙っているようなことを言っていた』
『もしこれを読んでいる君が転生者だとしても気を付けた方がいい。俺ら地球人はこの世界において特別な存在だ。少しでも存在が明るみになれば奴が来るだろう』
おっと。
僕も狙われる可能性があるのか。
才能があるらしいのは嬉しいけど、その力を見せびらかすとバレちゃうのか。
『俺は相当強くなった。だが奴も同じかそれ以上に強い。正直、勝てないだろう』
『可能なら同じ境遇の人間をみつけ、徒党を組んだ方がいい。それまではひたすら力を隠して生きるべきだ』
この人の強さは知らないけど、前世のアイツは相当強そうだったな。
『自称神と鬼ごっこするのもいいが、あいにくこの世界で俺は守るべき家族ができた。俺は奴と戦う。この本が残っているなら、俺は死んでいるだろう』
『これから俺が知ってる限りの訓練方法とその秘匿方法を書いていく。……自由に生きるのを止めはしないが、読んでおくことを勧める』
僕が読んでいる時点でこの人は戦って、死んじゃったんだ。
なんだか悲しいな。
『君がどこでこれを読んでいるか分からないが、困ったことがあればタイトルにあるエクスウェルの家を探すといい。きっと力になってくれる筈だ』
『顔も知らない同胞よ。君の幸せを願っている』
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