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ようやく勉強の始まり



「…………」

「……」

「…………」

「……」


誰か助けて。

リナさんが固まって動かなくなっちゃった。

口をあんぐり開けて体はビタっと静止してるのに、目の前を動いてる僕のことはしっかり目で追いかけているから余計怖い。


「……本当に、聞こえてるんですね?」

「う、うん。まぁ」


聞こえちゃまずかったかな。

でも、あんなに叫んでたら聞こえるって。


「今、私は魔法を使って喋っていました。普通なら声は聞こえません」

「まほう……」


魔法、使ってたんだ。

本物の魔法を見るのは初めてだ。凄い! けど、いつ使ったんだろう。

ぼそぼそ呟いてたからそれが詠唱だったのかな。


「それを突破したとなると、ヒカル様は既に魔力を持っていることになります。しかも相当な量の」


この前団長さんにも言われたっけ。魔力があるって。

リナさんは真面目な顔で僕を見つめる。普通に照れるからやめて欲しい。可愛い顔。


「専門外ですが、安心してください。これも教師の務めです」


よく分かんないけど、安心していいって。

色々あるみたいだけどとにかく勉強を教えてくれればなんでもいいや。


「改めて自己紹介しましょう。私はリナ。リナ・エグニスです」

「僕はヒカル。ヒカル・エクスウェル」


色々あったけど、ようやくお勉強会のスタートだ。


■ロ■ロ■


つ、疲れた……。

まさか一日でこんな詰め込まれるなんて。

僕も久々の勉強が楽しくってついつい調子乗っちゃったのもあるけど、それに合わせてまぁ容赦なくペースアップするもんだから。

考えすぎて頭がパンクするなんてこの世界に来て初めての経験だ。


リナ先生は週に一回来てくれて、色々なことを教えてくれるらしい。

幸いなことに、宿題が出されるようなことは無かった。

よし、来週までゆっくりしよう……とはならない。

明日は護衛さんたちの訓練に参加させてもらう予定だ。そろそろ体が動くようになって来たから基礎作りしないと。


「さて、と」


六歳になってあの部屋からはお引越し、新しい子供部屋が今の僕の部屋。

乳母のニャシーもお付きから外れちゃって少し寂しいけど、一人っきりの時間が出来たのはうれしい。

本を読んだり、体のモヤモヤ……魔力を動かす訓練をしてる。

一人で何の知識もないまま動かして悪い方向に行っても怖いけど、何もしないよりはマシだろう。それに、なんとなくこれで大丈夫な気がする。

ただの勘だけどね。


「ヒカル様、御飯ですよ」

「うん。今行くね!」


さ、しっかり食べて明日も頑張ろう。

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