新しい生活
「じゃあね、ヒカル」
「うん……バイバイ、お兄ちゃん」
次の日。王都での用事も全部終わったから、僕たちはエクスウェル領に帰ることに。
王都の学園にいるお兄ちゃんとはお別れ。長期休暇まで会えないのは寂しいけど、しょうがない。
お見送りには何故か分からないけど団長さんも来てくれた。ホントになんで?
よく分かんないけど、そんな訳でお兄ちゃんたちにお見送りされて王都を出発した。
護衛の人達にしっかり守られながら、安全で快適……とは言えない旅は一週間ぐらいで終わり。
僕たちの住んでいるエクスウェル領に着いた。
六年くらいしか過ごしてないけど、帰ってきたって感じする。
「お帰りなさいリザフ。ヒカル」
「あぁただいま」
「ただいま! お母さん」
お母さんや乳母さんに迎えてもらって帰宅、と。
ふぅ、やっぱり自分の家が一番だ。
■ロ■ロ■
これから僕はまたいつも通りの、平穏な日々を過ごすことになる。
ただ、変化もある。
今日から僕は、貴族として最低限の教養を身につけるための勉強が始まる。
座学に運動にって、気持ちはピカピカの一年生。
なんでも、貴族令嬢の方が先生として来てくれるんだとか。ちょっと緊張してる。
「失礼します」
お、噂をすれば何とやら。さっそく先生の登場だ。
部屋に入ってきたのは――
「……子供?」
「あなたには言われたくありませんが……」
それはごもっとも。
でもどう見たって子供だ。14歳くらい。
でも着てる服は大人用でなんかコスプレしてるみたい。
「コスプレじゃないですからね」
なんでバレた。
凄い睨んでくるけど、ぜんぜん怖くないしむしろ拗ねてる子供みたいでちょっと可愛くすら感じてきた。
「まったく。……それで、僕はなんでここにいるんです? 遊ぶのは良いですけど今からお勉強なので他のところに行ってください」
「僕がその勉強する生徒なんだけど」
「え? いやいや、私が来たのはエクスウェル伯爵家の次男、ヒカル様の教師としてです。あなたのような子供の先生ではありません」
「僕がヒカルだよ?」
「へ? まさか、そんな訳ないですよ。ヒカル様はお兄様に匹敵するほど聡明なお方のはずです。いくら子供でも嘘はダメですよ」
「嘘じゃないってば」
全然信じてくれない。
さっきからなんか、凄い間違った情報を与えられてる感じがする。
「失礼しまーす。ヒカル様、お茶はいかがですか?」
部屋に入ってきたのはメイドのナターシャ。
……そういえばナターシャは家庭教師の人と顔見知りって言ってたっけ。
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