これからは慎ましく
余韻覚めやらぬまま、僕は気が付けば部屋に戻っていた。
さっきの光景が頭から離れない。
ハッキリと見えたわけじゃないけど、忘れることの出来ない景色。
何度も小説で読んだ、“異世界転生”を自分が体験出来るなんて思っても見なかった。
ここが異世界ならあの女の子の髪が鮮やかなのも頷ける。
きっとここはどこかの貴族の屋敷で、僕はその子供。
だとするとあの女の子は姉になるのだろう。
生まれ変わった、と気付いた時は特になんの感動も無かった。
でも今その分の感動を味わっている。
せっかく異世界に来たんだ、精一杯楽しもう。
……いやダメだ。
派手にやり過ぎると、また神を名乗る変な奴に殺されてしまうかもしれない。
となればやることは一つ。
目立たないで強くなろう。あの時、結局僕はビルに圧殺された。
あそこでビルの倒壊に耐えたらまた別の道があったかもしれない。
最低限、自分の命が守れる程度の力は欲しい。
そして平和に生きよう。
何はともあれ今は順調に育つ。健康が一番だからね。
■ロ■ロ■
あの日から二、三日に一回外に出る事が日課になった。
乳母さんにだっこされて、屋敷の周りをぐるっと一周する。
何回目かの時、後ろに護衛っぽい人が着いて来てくれていることを知った。
部屋に戻ると直ぐにベビーベッドに戻される。
仕方の無い事だけど少し退屈だ。
やることも無いので今日も運動しよう、と思っていると珍しく扉がノックされる。
ノックと一緒に若い男の子の声が聞こえる。
乳母さんは直ぐに扉を開けて、その声の主を僕の所まで連れて来た。
「ϖÜ⊿…」
現れたのはやっぱり男の子。
と言ってもこの前の女の子よりは大きい。小学四年生ぐらいかな?
黒っぽい髪で、制服に身を包んでる。
緊張した雰囲気で僕の顔を覗いている。
なにやら僕の目の前で手を振っている。
一応目で追いかけてみる。案外楽しいな。
「Ш¤Ủ₩ЫЫ.ШЗ∬∬エ∦……ヒ㎈µ」
その男の子は僕の頭を撫でて何か言っている。
多分最後は僕の名前っぽい。ヒ……なんだろう。光源氏かな?
にしてもこの男の子、撫でるのが上手い。
段々気持ちよくなっていって、もう……意識が……お、や……
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