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また絡まれた



団長さんは見回りしてくると言って居なくなってしまった。

さっきの言葉が少し引っ掛かるけど、今はお兄ちゃんと二人の時間を楽しもう。


「それにしても、ちゃんと参加するとは思わなかったよ。ヒカルのことだからてっきり来ないかと」


うぐ……ちょっと差さる言葉。

でもお兄ちゃんがいなかったら参加してなかったろうなぁ。


「何はともあれ、参加してくれて嬉しいよ」

「うん。来てよかった」


何時かはこういった場に出る機会があるってお父さん言ってたしお兄ちゃんと会えた。それにあの団長さんとも。

僕が見えるこのモヤモヤの正体が判明したのは大きい収穫だ。


「でも正直もう帰りたい」

「もう少ししたら主催の挨拶がある。その後にちょっとした見世物があって、それが終わったら自由時間だ。それまでは頑張れ」

「うん……お兄ちゃんのために頑張る」


自由時間まで1時間半くらい。ぶっちゃけ長い。

お兄ちゃんは警備の仕事に戻るらしい。悲しいけど邪魔はしたくない。

なに、適当にご飯つまみながらボ〜っとしてれば時間なんてあっという間に過ぎる。何かあってもお兄ちゃんに頭を撫でられた今の僕に弱点などない!


「お、いたいた。おい黒髪!」


前言撤回。

ありました。もう帰りたい。

……いや、ここは敢えてスルーだ。確かに僕の髪色は珍しくて王都に来てからめちゃ見られてるし今も周りからあの子のことだなって視線があるけど、敢えてここはスルー。


「お前の事だよ! エクスウェル家の!」


あー、それを言われちゃ逃げられない。

一応振り向く。やっぱりそこにいるのはさっきのおデブちゃん。


「…………僕になにか?」

「すごいイヤそう!」

「用がないなら僕は失礼して」

「いやいやいやまてまてまて! あるから! お前に用があるから!」


チッ。どさくさに紛れて逃げる作戦は失敗か。

やれやれ、面倒だなぁ。


「さっきはよくも、舐めた態度とってくれたな」

「……それはゴメン。気を付ける」


軽く頭も下げる。変に反論したって相手にも火がついちゃうし、言いたいこと黙って聞いてればそのうち終わるでしょ。

相手も僕も、所詮はまだ子供だ。


「フン! 分かればいいんだ。これだから黒髪は嫌なんだ」


はぁ……もう帰りたい。

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