絡まれた時は
屋敷に入った僕たちを出迎えてくれたのは広いホール。
天井には豪華なシャンデリアが六個。僕の目がおかしく無かったら浮いてる。
明るく照らされたホールでは沢山の人々が談笑していた。
当たり前だけと多くはまだ子供で、一目で緊張してるのが分かる。可愛い。
ま、僕も同じ子供なんだけどね。
「初めに公爵殿への挨拶だ」
「僕、作法とか分からないよ?」
「それを学ぶ場でもある。私の真似をすればいい」
確かに、六歳の子供に作法だなんだを求める方が変か。
縦長のホールの一番奥、ステージになっている場所までずらりと列ができていて、僕達はその列に加わる。
「壇上にいるのが晩餐会の主催者、イルドネリフ公爵殿だ。場によって様々だが、多くの場合は初めに主催へ挨拶をする」
これだけの人数と挨拶しなきゃいけないなんて、主催者の人も大変だな。
「……大変だね、貴族っt「どけっ!」」
……???
頭にコツンと軽い衝撃。
声のタイミングからして僕を叩いた子供のものだろう。
「僕になにか?」
振り返るとそこには豚。ではなくて、えっと……ふくよかな体型のガキがいた。
金に近い茶髪。食べるのには困ってないんだろうなって感じる体型。場にあっていないようなド派手な服装。
そしてこちらに向けられている侮蔑の視線。
「うわぁ……」
「順番を譲れ! この黒髪め」
視線は感じてたけど、ここまであからさまなのは初めてだ。
お父さんが心配そうに見る。
大丈夫。僕、体は子供だけど中身は大人だから。
「どうぞ」
デ……ぽっちゃり君に順番を譲る。
挨拶だけらしいし、1人や2人増えたって何も変わらない。
それに、いつだってこういう馬鹿の思考は同じだ。
相手の嫌な顔を望んでるだけ。ならわざわざ乗ってやる必要も無い。
さっさと視界から外れるのが一番。
「おやおや、騒々しいと思ったらあなたでしたか」
「……レルベップ伯爵」
「うちの子が失礼をしてしまったかな? だったら謝るよ。変な噂を流されても困るからね」
横から乱入してきたのは、こちらもまたふくよかな男性。一発で親子と分かる。
嫌な喋り方。噂が少し少し気になるけど今はおとなしくしていよう。
「そんなことはしませんよ。どうぞ、前へ」
「……どうも」
うわぁ、分かりやすく不機嫌になった。
お父さんの対応的にも、面倒くさい人なんだろうな。
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