いざ、晩餐会へ
「……これじゃなきゃダメ?」
「とてもお似合いですよ、ヒカル様」
王都にある僕たちエクスウェル家の別宅。自宅に比べたら控えめだけど充分豪華な屋敷だ。
今は夕方。もうすぐ始まる晩餐会の準備としてメイドさんたちの着せ替え人形になっている。
今日の主役は僕たち、という訳で黒い燕尾服をピシッと決めているんだけど、ちょっとピシッとしすぎで動きずらい。
ただの晩餐会だし走り回ることは無いだろうけど、普段から動きやすい服を着ていたから慣れない。
これからは正装する機会が増えるってお父さんが言っていたし早く慣れないとなぁ。
常にエクスウェル家の名前が付きまとう。良くも悪くもね。
それを常に意識しないといけない。
「もうそろそろお時間です」
「いってらっしゃいませ。ヒカル様」
メイドさんに見送られて家を出る。
晩餐会に参加するのは僕と、エクスウェル家当主のお父さん。
大きく家紋が飾られた馬車に乗り込んで、出発だ。
開催場所はイルドネリフ公爵が所有する殿堂。今日みたいな晩餐会とかで使われる場所らしい。
そして、会場の警備を担当しているのは青旗騎士団。その見習いにお兄ちゃんがいる。
「この晩餐会は6歳になるお前たちの社交デビューの場でもあり、騎士団見習いの初任務の場でもある」
青旗騎士団と言うのは王家直属の騎士団で、言わば近衛騎士のような存在。
お兄ちゃんはこの騎士団の団長に直接スカウトされたんだとかなんだとか。
さすがは僕のお兄ちゃん。
「……お、おぉ〜」
そんなこんなで会場に辿り着いた。
王都で1、2を争う大きさの建物と聞いて期待していたんだけど……正直思ったよりは大きくない。
いや、小さい訳では無い。
四階建てくらいかな?町のでっかい総合体育館くらいの大きさはある。
まあそうだよね。文明の発展してる元の世界に比べたら、ね。……魔法使った建築とかもあるのかな。
なんて考えながら正門に向かう。
大きさはそこそこだけど、装飾が豪華だ。僕でも分かるくらい意匠が凝らされているって感じだ。
「エクスウェル家当主様並びにご子息様。ようこそおいで下さいました」
入口にいる騎士さんがビシッとかっこよく敬礼してくれる。
開けっ放しになっている正面の扉から晩餐会の会場にへ。
いよいよだ。
ようやくお兄ちゃんに会える!
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