今日は特別な日
思いっきり泣いたおかげでとてもスッキリした。
初めて心から、“僕”として泣いた気がする。
精神は高校生なのに、まだ小学生くらいのお兄ちゃんによしよしされながら大泣きしたのはちょっと恥ずかしかったけど、これがキッカケで僕は日々を平和に過ごすことができた。
これ以降モヤモヤと考えることもなく、幸せを満喫しながらゆっくりしていた。
平和な日々に刺激は少なかったけど、悩みが晴れたからなのか時間はあっという間に過ぎた。
おじいちゃんと再開したり、お姉ちゃんが帰ってきたり。
僕もかなり成長して、今では家の中を自由に歩き回れる。
今思うと、歩けなかった時はとても不便だった。
さて、そんな訳で今日は僕の誕生日、では無い。
では無いけど、僕は三歳になった。
最初の一年は別だけど、二歳から年齢のカウントは年越しで全員同じらしい。
なので、歳を越して僕はめでたく三歳になった。
三歳になると手続きとかあるらしい。
という訳で今僕は王都にいる。
自分の家からすら全く出なかった僕には馬車での長旅も王都の光景も全部新鮮だった。
昂りすぎて何回か意識を失ってしまったのは仕方の無いことだろう。
到着したら王都にある別荘に荷物を置いて、おめかししたら直ぐに出発。
あっという間に王城の中へ。
「ようこそ、エクスウェル伯爵殿」
「あぁ」
「ご案内します」
出迎えてくれたのは鎧に包まれた人。
声からして多分男の人かな。
その人に連れられて移動する。ちなみに、ここにいるのは僕とお父さんだけ。
お兄ちゃんやお母さんは別荘で待機している。
お父さんに抱っこされて長い廊下を歩く。
壁も床も天井も、見るからに高級感がある。等間隔に置かれている壺とか絵画も高そう。
そしてとても、静かだ。
「こちらです。では」
「ヒカル、私が合図をしたら練習通りにするんだよ」
「うん」
案内されたのは両開きの豪華な扉の前。
僕の手を握るお父さんの顔がガッチガチに緊張している。
詳しい話は知らないけど、王様に挨拶をするんだとか。
「よし、行こうか」
「エクスウェル伯爵、ならびに子息の入室です」
扉が開いて、数歩歩く。
廊下も凄かったけど、それを遥かに上回るフカフカ絨毯。
小さな体育館くらいの広い部屋。
間の前にはちょっとした段差がって、その上にいるのが多分、王様。
お父さんがしゃがみ込む。
敬礼かな。僕も真似しておこう。
「王家より爵位を賜りし我が家に、新たな命を授かったことを報告します」
「……名乗りを上げよ」
お父さんから合図を貰う。
ゆっくり立ち上がって、前を向く。
別にただの儀式だし三歳児に高度なことは求められない。
けど、こういった場面はちょっとカッコつけたくなるのは当然だと思う。
「おはつにおめにかかります。えくすえうけのじなん、ひかる・えくすえうです!」
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