初めて外に出られるらしい
扉を開けるとそこは……廊下だった。
当然だよね。だってここは家の中だし。
乳母さんはゆっくり、僕がキョロキョロと何かを見るのに立ち止まってペースを合わせて歩いてくれる。
その気遣いに感謝しながら色々見て回る。
と言ってもそんなに視界がハッキリしている訳じゃなくて、色がぼんやり分かる程度。
それでも廊下にあるものは大体予想がつくし、何となくでも普段とは違う物が見えるのは楽しい。
「Ш±╬⊿¤∦Ш…Ш¤╬₩!」
階段を降りると、誰かが話しかけて来た。
今の僕が言うのもなんだけど、話しかけてきたのはまだ幼い子供。
服がヒラヒラしてるから多分女の子。
乳母さんがしゃがんで僕と女の子を近づける。
随分派手な色の髪の子だ。鮮やかなオレンジ色なんて見た事ない。
女の子はおそるおそるといった様子で僕のほっぺたをつつく。
……くすぐったいけど悪くない。
悪くは無いけど、このままじゃ止まる気配がないので指を掴む。
ビックリしたのか逃げちゃった。
悪い事をしたかな。
「エ⊿∦Ы~±ỦЬ」
乳母さんの声は怒ってないようだし大丈夫だろう。
暫く歩くとまた階段があった。
しかも凄く豪華な階段だ。
ヨーロッパの昔の貴族が住んでいる屋敷にありそうな、広い階段。
既視感があると思ったら、つい最近見た“エルサと冬の女帝”に出てくる氷の城だ。
あんな感じのぐるっと回る階段を降りる。
扉の横には人が立ってて、乳母さんが声をかけると扉を開けてくれた。
眩しい。
ずっと部屋の中にいたから日光が眩しく感じる。
あまりにも眩しいから顔を背けるけど、乳母さんは気にせずに外に向かう。
そして──外に出る。
目の前の景色に、僕は言葉を失った。
眼下に広がる色鮮やかな街並み、どこまでも続く黄緑色の海。
空には大きな鳥が羽ばたき、遥か先には雲を貫く山が見える。
僕は暫く固まっていた。
目の前の光景が信じられなかった。
あんなに大きい鳥を僕は知らない。
あんなに巨大な山脈を僕は見た事がない。
でも僕は知ってる。この光景を。
本で読んだことがある。日本、いや地球では無いどこかの世界。
ドラゴンが空を飛び、魔法が存在する世界。
僕は、異世界に転生したんだ!
もし良かったら、評価やブックマークよろしくお願いします